青砥 娘の脳はいまはシナプスがたくさんある状態です。だからこそ、やるなら今しかないと思い、生後1、2ヵ月から「ウィークリーミュージアム」を家でやっています。

1週間ごとに1週目はクリムト展、2週目はピカソ展というようにテーマを決めて、壁に絵を貼っています。まだ赤ちゃんですが、すごく楽しんで見ていますよ。それ以外にもピアノを弾かせる、というか叩かせるなどもさせています。

イヤな記憶を「どう振り返るか」が、その人の「自信」を決める【青砥瑞人×佐宗邦威(3)】青砥瑞人(あおと・みずと)
DAncing Einstein(ダンシング・アインシュタイン)ファウンダー/CEO
日本の高校を中退後、米UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にて神経科学学部を飛び級卒業。脳神経の奥深さと無限の可能性に惹かれ、暇さえあれば医学論文に目を通す「脳ヲタク」。一方で、とくに教育には情熱を持ち、学びの楽しさと教えの尊さを伝えることが生きがい。研究者ではなく、「研究成果」を教育現場・ヒトの成長する場にコネクトし、ヒトの学習と教育の発展に人生を捧げている。脳×教育×ITを掛け合わせたNeuroEdTechを世界初で立ち上げ、この分野でいくつもの特許を取得している。

いわゆる感性を育むには、非言語的なものにどれだけ触れているかが重要になります。ですから最初は感覚反応を刺激するものに触れさせる。「美的感覚はセンス」と言われますが、脳は基本的に「記憶ドリブン」ですから、非言語的なものに触れていればそれだけでも十分に感性は育まれます。

佐宗 それはとってもわかりやすいですね! そのときにコツというか、気をつけるべきことはありますか?

青砥 大事なことがあるとすれば、「これをやることは楽しい!」と学習させることですね。なので、僕と妻もすごいテンションで「楽しいね!」という空気をつくり、一緒に楽しんでいます(笑)。

佐宗 その場合、何かを「楽しい!」と思えるためには、そのことに対して一定の「自信」を持てるかどうかが重要になると思うんですが、脳はどのようにして自信を獲得するんでしょうか?

青砥 ニューロサイエンスの文脈から考えた場合、自信には「根拠のある自信」と「根拠のない自信」の2つあって、どちらも大事です。根拠のある自信は、脳の中の記憶に成功体験をどんどん蓄積していくことで生まれます。うまくいったときにポジティブなフィードバックをかければいいのですが、それができない人が多いんです。

たとえば10やることがあったとき、8できたとします。人間の認知は差分に目が行くため、どうしても「できていない2」に向いてしまうのです。たしかに、足りていない2の部分を学習していくことは大事です。しかし、自信をつくるうえで大事なのは、「できた8」の部分です。なぜ80点取れたのか、アチーブメントに対するポジティブな感情を抱くことです。達成できた部分にちゃんと目を向け、ポジティブな情動を育てていく。

佐宗 「できた8」をフィードバックしないで、「できなかった2」ばかりをフィードバックすると、見事に自信のない脳ができあがってしまうと?

青砥 そのとおりです。さらに、子どもの教育の場合、親なり教育者なりが、ちゃんとフィードバックをかけてあげることで、自信がより強固になっていきます。「よくわからないけど8できた」という「なんとなく」の状態では脳の記憶に残りません。人間の脳は、エネルギーの無駄遣いをしたがりませんから、無意識的に何かを記憶することはほとんどありません。だからこそ、「なんとなく」で放置するのではなく、意識的に目を向けて脳に痕跡を残さない限り、「できた8」のことも覚えません。本当の意味での自己肯定感につなげるためには、記憶にちゃんと残していくことが必要ですね。

どんなにくだらないことでも
「できた」という達成感が大事

佐宗 それは、子どもの記憶に残るような「体験」をデザインするということだと僕は理解したんですが、そのためには親はどんなことに気をつけるといいんでしょうか? 言葉でやりとりすればいいのか、もっと何か演出を加えたほうがいいのか。

イヤな記憶を「どう振り返るか」が、その人の「自信」を決める【青砥瑞人×佐宗邦威(3)】佐宗邦威(さそう・くにたけ)
BIOTOPE代表。戦略デザイナー。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授
大学院大学至善館准教授東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修了。P&G、ソニーなどを経て、共創型イノベーションファーム・BIOTOPEを起業。著書にベストセラーとなった『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』(ダイヤモンド社)など。

青砥 一つはなるべく時間を空けないで振り返ることですね。記憶を振り返る場合、意識に上がってくることのほとんどは、感情が動いた出来事です。ただ、けっこうな時間が経ってから振り返ると、感情を揺さぶられて印象に残っていることばかりが中心になってしまう。たしかにそれも記憶の一部分ですが、それだけがすべてではないはずです。ちょっとしたアチーブメントはいっぱいあるはずなので、そこに対して意識を向けるためには、時間が空きすぎないほうがいいと思います。

佐宗 それは大人の学びについても同じことが言えそうですね。

青砥 そう思います。僕はふだんから、自分がアチーブできるちょっとしたこと、くだらないことを生活のなかにいっぱい設けています。自分が「できた」という実感を得られる環境をつくることを大切にしているんです。

たとえば、毎朝は「4時44分」に起きると決めています。ちゃんと起きられたら、そのときの自分の情動なりをちゃんとチェックして記録する。慣れれば1分もかかりません。そのあと明治神宮でいただいたお守りに向かってお祈りをします。決して信仰心が篤いわけではないのですが、そうするとハッピーな気分になれるので、お祈りをしてそれも記録する。さらに、ストレッチと瞑想も習慣にしています。もっとくだらないことでいえば、自分の娘の写真を1日に1枚は撮ってグーグルドライブに上げることにしています。

毎日の「できた」という感覚が大事なんです。「できた」という感覚を積み上げていくと、いわゆる自己肯定感につながっていきますから、多少の演出があってもいいので、アチーブメントに意識を向けて学習していく。そして人間の脳は、これを俯瞰的にメタ認知したときに、本当の意味での根拠のある自信を獲得します。

イヤな記憶を「どう振り返るか」が、その人の「自信」を決める【青砥瑞人×佐宗邦威(3)】