「失敗はあっても結局うまくいく」
という「記憶の書き換え」作業

青砥 我々の学びは、スタートしてから山あり谷ありで進んでいきます。多くの振り返りは、できていないことを「なんでできなかったんだろう」と振り返ります。僕は「このときの目線を変えましょう」と言っています。

たしかに、できないことをそのときに振り返るのも有効です。しかし、もっと大切なことは、うまくいったときの振り返りのあり方です。成功体験を振り返るときにはポジティブな感情が生まれますから、その状態で、途中プロセスで生まれたストレスやネガティブな記憶を思い出す。ポジティブな感情が生まれているときに、ネガティブな思い出を再生することで初めて、過去の記憶に対して「書き換え」が行われます。「ああ……あの苦しい時期があったから、いまの自分があるんだな」という具合です。

なんとなく生きているだけだと、脳はこうした学習をやってくれません。内省し、メタ認知している人は、過去の苦しい過程とうまくいった体験とを同時に想起し、失敗や苦労に紐づいたネガティブな記憶をポジティブに書き換えていきます。こうした学習が積み重なった結果が、いわゆるレジリエンス(回復力)が高まった状態と言えるでしょう。実体験に基づいて、脳が「失敗=成功へのステップ」として学習しているわけですね。

佐宗 僕はイノベーション支援をしていますが、企業の中でイノベーションを起こすのはすごく大変で、「頑張っているけどなかなか成果が出ない」と感じてしまう人が多いんです。なので、1年なり2年なりでどんなイベントがあったか書いてもらい、その結果を通じてストーリーを再構築する、というワークをやるんです。

そうすると、「あの時期はうまくいっていないように見えたけど、いま振り返るとちゃんとできてるじゃん」ということが見えてきます。「自分はダメだ」「周囲から評価されない」と思っている人でも、きちんとストーリーとして振り返ってみると、その人のレベルアップにつながっていることが見えてくる。

青砥 「できたこと」と「できなかったこと」を結びつけて振り返ることのメリットは、途中プロセスで生まれたネガティブな感情の記憶を書き換えられる点です。結びつきができている人は、「あのときもしんどかったけど、やっぱり最終的にはなんとかなったじゃん。だから今回も……」と考えられます。そうした楽観性は天性でもなんでもなくて、こうした結びつきを脳内でつくってきたかどうかにかかっているんです。

佐宗 途中で挫けてしまう人は、苦労した経験の書き換えができていないから、辛い状況にぶち当たったときに「もうダメだ……」となってしまうんですね。

青砥 子どもの学習でも、この点を意識するかどうかで大きく変わってくると思います。子どもが何かを成し遂げたときに、「すごいね、がんばったね」とただほめるだけではなく、「こういうつらいことがあったね」「ここができなかったね」というふうにネガティブな記憶も思い返させてみる。そのうえで、「そんなこともあったけど、でも最終的にはうまくいったね」というふうに結びつけを行う。これを繰り返していけば、次に壁に突き当たったとしても、それに立ち向かえるようになっていきます。いわゆる粘り強さとか諦めない心のようなものは、まったく後天的なものなんですよ。

第4回に続く