アイコスが日本で
成功できた理由

 こうした状況があるにもかかわらず、2014年という早期の段階で、日本とイタリアでは一部都市限定で販売が開始され、2016年に日本は世界で初めて全国販売されている。健康被害の研究が不十分な中、アイコスが世界に先駆けて日本で発売された理由について、田淵医師は次のように語る。

「予防原則にのっとり『安全性が確認されるまでは販売を認めない』とするべきだと思いますが、『健康被害が確認されるまでは販売してよい』というスタンスをとっています。また、実は加熱式タバコのアコードという商品は、アイコスが登場するよりもずっと前から市場に投入されていましたが、ほとんど売れず、財務省は『今回もどうせ売れないだろう』という見立てから、アイコスの日本での販売を認可した、という事情もあったかもしれません」

 その結果、アイコスの世界中の販売高の96%(2016年時点)を日本が占めた。現在でも世界シェアの80%以上を日本が占めている。現在、国内加熱式たばこ市場で、アイコスは約70%のシェアを獲得している人気ぶりである。

 アイコスが日本でのビジネスを成功させた理由を知るためには、まずは日本の制度やタバコ産業の位置づけに注目する必要がある。

 日本でのタバコの販売などは、「たばこ事業法」という法律のもと財務省が管轄している。たばこ事業法とは、「たばこ産業の健全な発展を図り、財政収入の安定的確保を目的とする」法律。つまり、税収確保のための法律だ。

「財務省の見立てとは裏腹にアイコスが売れてしまったため、当初はタバコ税の計算方法などもうまくバランスが取れない状態になっていました。しかし、アイコスが売れるとわかるや財務省は税制を変更し、新たな税収源を手に入れたのです。また、財務省とタバコ業界の癒着の問題もあります。財務省はJTの株式の30%以上を保有しているため、長きにわたって天下り先となってきました。両者がこうした持ちつ持たれつの関係にあることも、日本がタバコに対して“寛大”とやゆされる原因の一つになっています」