令和の時代にも
戦時中の鬼教官マインドは健在

 この「職場の特攻隊」が終戦となると、日本復興の中心プレーヤーとなった。彼らはさまざまな企業、さまざまな業界で、リーダー的な存在として人材育成を行ったのである。

「今度のプレゼンは死ぬ気で取りにいけよ!」「新人なんだから当たって砕けるつもりで営業してこい!」などなど、戦争を体験したことのないおじさんたちが、戦時中の鬼教官みたいなことを口走るのは、上司から部下へ、その人が上司になってまた部下へという感じで、「職場の特攻隊」のような思想が社員教育として脈々と受け継がれているからだ。

 そして、この「困難は秩序を重んじれば乗り越えられる」という思想こそが、駅まで続く長い行列の最後尾に文句一つ言わずに並ぶ、という「社畜の参勤交代」を生み出す「病」の原因なのだ。

 という話を聞くと、「給料をもらっている以上、電車が動けば職場に向かうのは当然」「こういう勤勉さが日本を支えているのだ」とムキになって肯定する人もいるが、そういう昭和の根性論から脱却しないといけないのは、有望な若者が潰れていくということもあるが、取り返しのつかない甚大な被害を招く恐れがあるからだ。

 例えば、「社畜の参勤交代」で駅や車内が大混雑している時、巨大地震がやってきたらどうか。首都直下型地震は4年以内に70%の確率で起こるともいわれており、いつ来てもおかしくないのだ。

 外で並んでいる人はまだいいとして、混雑した駅構内や車内でぎゅうぎゅうに押しつぶされている人たちは大パニックだろう。何か不測の事態が起きた際に逃げ場がないため、想像を超える深刻な被害が拡大するかもしれないのだ。

 実際、それを予感させる「悲劇」が今回起きている。JR南武線では運転再開後、いつもより混雑した車内で排泄物が見つかり、それを踏んだ人が転倒、さらに悪臭から嘔吐する人まで現れるという地獄絵図が繰り広げられたのである。

「社畜の参勤交代なんてネタでしょ」とホッコリしている場合ではない。世界にこれ以上、恥を晒さぬよう、そして、サラリーマンたちを地獄へ突き落とさないためにも、これ以上は絶対に引き継いではいけない「負の遺産」だということを、そろそろ真剣に議論すべきではないか。