◎「回復前期」には次のような指導がポイントになります。

「三寒四温は春の便りです」

 どん底を過ぎた回復期の始まりには、一進一退、日ごとの状態変動が目立つようになります。この時期には自殺が多いことから、「三寒四温は春の便りです」と患者さんに希望を持ってもらうよう言葉を送り、森田療法的養生の実践を心掛けていただくよう促しています。

「状態に応じて(臨機応変に)活動と休息のバランスをはかることが大事です」

 症状にやみくもにあらがうのではなく、状態に応じて活動と休息のバランスを取ることが、養生の基本になります。例えば、「うつ病特有の疲労感が強いときには休息を主とし、軽いときには手の付けやすいところから行動してみましょう」と勧めます。「おっくうさとやってみようかなという気持ちが五分五分なら、とりあえずやってみましょう」と、無理のない範囲で、臨機応変を推奨します。

「心に浮かんだささやかな欲求を実行に移していきましょう」

 回復前期には、徐々に健康なエネルギーや欲求が回復してくるものの、まだその力は弱いものです。しかも心にふと浮かんだささやかな欲求(初一念)に対して、「こんなことをしても意味がない」「仕事もせずに何をしているのか」といった「かくあるべき」「かくあってはならない」という考え(二念、三念)によって、自らを封殺してしまうことが、うつ病の方々に起こりがちです。それだけに、このような二念、三念に惑わされず、初一念に従って自然に行動へと発揮していくようにアドバイスすることが重要なのです。少し外の空気を吸ってみたいという気持ちが芽生えたら、外をぶらぶら歩くなど、その気分や感じに身を委ねていただくのです。そのささやかな体験が、回復前期にはさらなる行動の弾みになるケースもあるのです。

 さて、先の患者さんに戻って、治療経過を振り返ることにしましょう。

 初診後2週間、2回目の診察では、「身から出たサビ」「バチが当たった」など、何をしていても罪悪感がある、人に会えば劣等感を抱くと訴えられました。「今、心に湧いてくる考えは、空に浮かぶ雲のように放っておいてください」と、改めて、うつ病に由来するもろもろの考えを棚上げすることを促しました。