「1つのグーグル」を目指し始めたのは
他社への危機感からではない

 かつてのグーグルでは、プロダクト同士での連携はありませんでした。検索や地図、動画、メールなど、あらゆるツールのナビゲーションはバラバラで、アカウントを登録してできることも統一されていませんでした。

 しかし8年前、グーグル共同創業者のラリー・ペイジがCEOに復帰したころから、グーグルは「ワン・グーグル(1つのグーグル)」を掲げるようになりました。プロダクトごとにバラバラだったデザインにも設計体系ができ、エンジニア向けに技術や開発手法などに関するガイドラインが示されています。

 1つのグーグルを目指すようになり、デザインの統一が図られたのは、他社への危機感というよりはユーザーの使い勝手が悪かったことに対して、ラリーがプロダクトやユーザー体験を「美しくしたい」との思いを抱いたことが大きかったかもしれません。

 バラバラに開発が進められていた時代のグーグルも、それはそれで、いい会社だったと思います。それぞれが最善を目指して、みんなが好き勝手にプロダクトをつくる中で、すごいものがどんどん出てきていました。ただし各プロダクトの連携や統一性、整合性が取れないという欠点があり、それぞれの方向性が微妙にずれていたところを統一することになったのです。これはトップの意向が強く反映されたものです。

 ただ、グーグルはトップダウンだけの会社ではありません。トップから芯の通った強いメッセージが発信されますが、細かいところでは各プロダクトの担当からボトムアップの形でプロダクトづくりが進められていきます。

 プロダクト同士の連携や統一を図ったことは、プロダクトがもたらすユーザー体験の面でも、事業面でも理にかなっていると思います。ハウツーコンテンツのハンズフリーでの動画再生などは、プロダクト連携やフォーマットの統一がなければ実現は難しかったことでしょう。