産業革命が人間社会を
大きく変えた!:その2

 産業革命はもう1つ、僕が今、APU(立命館アジア太平洋大学)で実践している「教育」にも大きな影響を与えています。

 大まかにいえば、産業革命以前の教育は、「教育イコール人生イコール生活」だったのです。

 鍛冶屋さんになりたいと思ったら鍛冶屋さんに弟子入りし、朝から晩まで仕事をする。そこで鍛冶屋の仕事を教えてもらう。
 そこで受けた教育は、彼自身の生活であり人生そのものでもあった。ある種、ギルドや徒弟奉公社会で、教育と人間の生活や人生は同じだった。

 ところが産業革命はその社会を一変させます。
 産業革命は均質な労働者を必要とする。どこの工場にも最低限のマニュアルがある。労働者には最低限、識字能力が求められるし、部品の数を数える計数能力も必要。
 となると、均質な労働力を恒常的に確保するには、学校を整備しなければならないというニーズが生まれてくるわけです。

 スクールは、もともと「余暇」という意味でした。
 毎日毎日の生活からは切り離された概念です。
 生活から切り離して若者を集め、読み・書き・算盤を教えたらすぐに工場で使える。
 だから教育の在り方も、産業革命前後で大きく変わっていく。

 つまり、産業革命によって初めて、人生や生活と教育が最終的に切り離されたのです。

 そういう意味で、産業革命は、画期的なイノベーションだったと僕は思います。
 ただ、いくら紅茶が飲めても、一日20時間も働くのは嫌です。日本でいえば、女工哀史の世界。マルクスを例に取りましたが、このようにどんな哲学であっても、その時代背景を色濃く受けているのです。

(つづく)