「好きか嫌いか」もその人らしさ

産業医・精神科医
島根大学医学部卒業後、さまざまな病院で内科・外科・救急科・皮膚科など多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。現在は、産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。“金髪アフロドクター”として、ブログ「たたかう産業医!」やSNSを活用するだけでなく、コラムを担当したり、全国で講演したり、精力的に医療情報の発信を続けている。著書には、発売後に即重版になった『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)がある。
後閑:確かに、好きか嫌いかって、それもその人らしさですよね。
井上:テレビの芸能人でも、好きな人ランキング1位の人が嫌いな人ランキングで3位に入っていたりするじゃないですか。人によって見方は全然違うんですよね。
その人に対して好きなり、嫌いなりの理由をちゃんと持っておいたほうが今後いいですし、そういうものは新しい人に会うと、よりわかりやすくなるものです。
後閑:よく知っている人では、慣れや情があるから、なんで好きなのかがわからなかったりするものですよね。
井上:新しい人に会うのもそうですし、新しいことに乗り出していくというのが、自分はどういう人間かを一番わかりやすくしてくれます。
行ったことのない違う場所へ行くだけで、大都会が好きな人もいれば、一本路地を入った静かな街並みが好きだという人もいるし、自然に囲まれた場所が好きな人もいる。それぞれにある好き嫌いを知っていくことが大事です。
後閑:それを言語化しておくのも大事だと私は思っています。
一人では動けなくなってしまったとか、病気でやりたいことがやれなくなってしまった時に、なんで好きだったのかということを言語化しておくと、今までのやり方とは違う方法で、自分らしい人生を続けるための手段が見つけられたり、見つけてもらいやすくなる気がしています。
井上:言語化は確かにすごく大事ですね。
自分でそれを見つけておくと、次のことをする時に最短距離で達成しやすくなりますよね。どういう人を好きなのかを知っていれば、こんな時はこういう人に頼ればいいというのを自分の中で言語化しておけば探しやすいし、人にも頼みやすい。それならそういう知り合いがいるわ、みたいに、人に助けてもらいやすい。
後閑:自分がどうしたいかといきなり聞かれても、みんな出てこないですよね。
今後どうしていきたいかなんて、元気な時に考えられなかったら、病気になってから考えられるわけない。
井上:自分の内なる気持ちを出していかないと。頭で考えて出てくるものじゃないですから。
後閑:だから普段から気持ちを言語化するのはすごく大事ですね。けれど、そうはいっても病気や仕事が辛い時には悩むことがあるじゃないですか。そういう時に井上先生のおすすめのリフレッシュ方法はありませんか?
井上:個人的な話でいいなら、やっぱりお笑いを見ることです。
関西の文化なのかもしれませんが、僕は純粋にお笑いが好きで、めっちゃ見ます。
後閑:好きな芸人さんは誰ですか?
井上:僕は猫ひろしさんがすごく好きなんですよ。「にゃー」の猫ひろしが好きなんです。
正統派の漫才も好きなんですけど、猫ひろしさんの好きなところは、誰も真似できない。ゼロから思いつくのってすごいじゃないですか。「どうやって思いついたの? すごいな」というとこから入っているんです。
後閑:確かにあれはあの方にしかできない。
井上:猫ひろしさんのネタに台本があるかどうかなんてわからないですけれど、台本があっても真似できないでしょう。彼の小柄なキャラを込みで、すべてが総合的にぴったり合っているというか、彼にしかできないところが好きなんです。
僕にとってはお笑いですけど、結局は自分の好きなことですよね。好きなことをやってみるというのがいいんですよ。
後閑:それが好きなのも井上先生のらしさですね。好きな理由を言語化しとくって大事ですね。
井上:あと医学的にはお風呂もいいと思います。
手軽ですし、お風呂に入るのにはエネルギーがいるので、精神的にしんどい時にはかなり大変に感じると思うんですが、入れる元気があるのなら、入浴です。温泉もそうですが。リフレッシュ、気分転換にいい。
後閑:うつの症状の1つに、「お風呂に入れない」がありましたよね?
井上:あります。お風呂に入るって、エネルギーがいるんです。うつの人はなかなかお風呂に入れなかったりしますね。
後閑:逆にお風呂は入れないほど疲れていたら、うつ病かもしれないということですか?
井上:そうかもしれないです。そこまでいってる可能性は十分あると思います。
後閑:他にもありませんか?