後閑:私も、それまでは「気がかりなことはありませんか?」と聞いても、ここが痛い、ここの調子が悪いといった健康のことしか言わなかった患者さんから、先日、「気がかりなことはありませんか?」と聞いた時に、「なんかね、迷惑メールがいっぱい来るんだけど大丈夫かな」と言われました。
井上:そういうの、いいですね。
後閑:すぐには答えられないけど、頼ってもらえたのは嬉しいですよね。
井上:あるある。そういうこと、よくあります。
後閑:最近ちょっと表情が暗いなと思っていたんですが、原因は痛みではなく迷惑メールを気にしていたからだとわかったんです。
井上:なるほどね。話しやすい関係性は大事です。
だから雑談を挟みたいですね。「休職中はゆっくり休んでゴロゴロしていていいから」という話をした人に次に会った時、「ゴロゴロして、何をしてたの?」と聞いて、「YouTubeを見てました」と答えてくれたら、「何を見てたの?」と聞きます。面白いものを教えてもらったりすることもありますね。
後閑:最後に、病気で悩んでる方、ご本人に向けて、何かメッセージはありませんか。
井上:がんや病気になった時に、今までとは違う人生の歩み方をするようになる人がたくさんいると思います。それは自分の体を見直す時間ができたという見方をしてほしいです。また、仕事ばかりだった視点とはまた違う視点を持てたっていう見方もしてほしいです。そんな時は、視野が広がっていると僕は思うんですよね。
おそらく仕事を一生懸命されてきた人ばかりだと思うんですが、仕事ばかりの中に幸せはないと思っています。
ある程度やる仕事が減ったとしても、やれることが減ったとしても、それ以外のところで満たせるものがたくさんあると思います。そういうものをどんどん見つけていってほしいと思います。
自分の知らない世界というものが、逆に広がっていくということがあるでしょうし、なおかつご自身が病気になってしまったことで、今まであまり接点のなかった人、病気で苦しんでいる人に対しての視野も開けてくるでしょう。そういう人への声のかけ方なども含めて、逆に僕らに教えてほしいくらいです。
ネガティブな方向にばかりでなく、ポジティブな方向に変換することができると思っています。それはすごい価値のあることです。
病気になってしまったことは、確かに残念なことかもしれません。でも、無価値なことではないのです。価値のあることだから、そこはまた違う視点を持って歩んでほしいと思います。
後閑:先生の本は、病気の治療をしながら仕事をしている人にぜひすすめたいと思いました。
井上:がん患者さんでもできる範囲で仕事は頑張ろうと思っている人もいると思います。けれど実際問題、治療の時間や副作用で思ったようにできないこともあるものです。そんな時に仕事で悩んだ人に少しでも役立つようなことが書いてあるんじゃないかなと思うので、ぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。
後閑:字を読むのも辛いという状況にある人でも、すごく読みやすいのでページをめくるだけでもわかりますし、しかもすごくゆるくて癒されるイラストがいいですよね。
井上:イラストを入れることと、文字は大きく、行間は広くしたので、しんどい人でも読みやすいと思います。
後閑:たくさんの人に読んでもらいたいですね。ありがとうございました。
・自分らしい「好きか嫌いか」を大事に
・オススメのリフレッシュ方法
(1) 好きなことする
(2) お風呂に入る
(3) 睡眠
・なんでも話せる信頼できる人を見つけよう