フォルクスワーゲンのブース風景。「ID.3」を主役としてEVコンセプトモデルがずらりフォルクスワーゲンのブース風景。「ID.3」を主役としてEVコンセプトモデルがずらり Photo by Kenji Momota

10年先がまったく見えない
日系メーカーは打つ手なし!?

 この2~3年、自動車産業の各方面の関係者と、自動車産業の未来について議論する機会が一気に増えた。

 先方からは「100年に1度の自動車産業大変革期において、社内で危機感を共有したい」という要望が多い。

 なかでもティア1と呼ばれる大手自動車部品メーカーの状況は極めて深刻だ。年間売り上げ数兆円の某企業からは「このままでは会社がつぶれる、というところまで踏み込んで、本音で書いてほしい」という要望があり、世界市場を含めた全従業員数万人向けに英文を含めて社内報に連載で寄稿した。

 こうした試みは一時的には多少の刺激になるが、従業員も役員も日々の作業に追われてしまい、危機感はあっという間に希薄になっているのが、この企業に限らず自動車産業界の実態だ。

 なぜ、そうなってしまうのか?

 理由は単純だ。企業として規模が大きくなり過ぎてしまい、社員も役員も「寄らば大樹の陰」という意識からどうしても抜け出せないからだ。特に40代半ば以上は「長期的には産業として存続はつらくなるだろうが、自分の定年までは、まあ大丈夫だろう」と高をくくる人が多い。

 一方で、20~30代半ばの社員の多くが「あと20年、いやあと10年先の自分の未来が見えない」と本音を漏らす。

 こうした世代差による産業への意識は、一般論で語られることが多いが、日系自動車産業界ではまさに現実である。

 自動運転、電動化、コネクテッドカー、さらにはMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス、サービスとしての移動)といったワードが飛び交う昨今だが、それらがどのように自分たちの仕事に直接的な影響を及ぼすのかが分からない、という指摘が多い。