新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が7都府県に対して「緊急事態宣言」を発令した。それ以降、対象自治体の選定基準を巡る議論が巻き起こっている。愛知県が含まれていなかったことを指す「名古屋飛ばし」がインターネット上で話題になったことがその典型だ。そこで今回ダイヤモンド・アナリティクスチームは、感染者が2倍となる目安の日数である「倍加時間」に着目。「名古屋飛ばし」の理由や、緊急事態宣言の「次の対象」がどこになるのかなどをデータに基づいて分析した。(ダイヤモンド・アナリティクスチーム)
緊急事態宣言の対象から外れた自治体も
次々に独自の宣言を発表
政府が7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)に対して「緊急事態宣言」を発令して以降、その余波が各自治体に広がっている。対象から外れた自治体は、感染拡大の危機感を募らせ、次々に独自の宣言を発表している。例えば、愛知県や岐阜県、三重県、香川県などがそうだ。さらに京都府のように、緊急事態宣言の対象に含めるよう政府に要請する自治体が出てくるなど、各地で緊迫した状況が続いている。
4月14日現在、下図に示すように、感染者の累計者数は国内で約8000人に達し、死者数も100人を超えた。このままではあと3、4日で感染者1万人を突破する勢いである。
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そんな中、地域住民は「なぜ自分の自治体が国の対象に含まれないのか」や「なぜ国と自治体との温度差があるのか」などと不思議に思っているかもしれない。
カギとなるのが、感染症の専門家らで構成する「基本的対処方針等諮問委員会」の尾身茂会長が会見で明らかにした、7都府県を選んだ対象基準にある。政府は以下の3つの指標に着目している。
(1)感染者の累計数
(2)感染者が2倍となる目安の日数である「倍加時間」
(3)感染者の経路が不明な割合である「孤発例」の割合
宣言の対象となった7都府県は、当時それぞれ感染者数が100人を超えており、感染経路不明者の割合も大阪、東京では5割を超えていた。つまり、感染が急拡大する中、感染者の大半がどこで感染したか分からず、クラスター対策の手段が講じられない状況となったため、非常事態宣言へと至ったのだ。
とはいえ、緊急事態宣言を県独自に出した愛知県も、感染者が100人を超える状況ではあった。では、なぜ愛知県が対象から外される「名古屋飛ばし」が起きたのか。そこで今回、着目したいのが「倍加時間」である。