コンサル大解剖Photo by Akira Yamamoto

「プロジェクト・ドラゴン」という成長プランを掲げ、ここ数年で業績を急拡大させてきたのが、コンサルビッグ4の一角のEYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)だ。長期連載『コンサル大解剖』では、EYSCの近藤聡社長のインタビューを前編・中編・後編の3本にわたってお送りする。後編の本稿では、中編に引き続き、近藤氏が新たな中期経営計画の柱となる新戦略について解説する。同氏が実現が可能だと考える理由や、業績に与える影響なども明らかにする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

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EYコンサルの新KPI
達成の鍵はカルチャー

――国内の売り上げと国内企業のアウトバウンドでの売り上げを足したGTER(グローバル・トータル・エンゲージメント・レベニュー)を重要指標とし、グローバルも重視していく(『EYコンサルが「グローバル」に軸足!?デロイト出身社長が明かす、デロイトやPwCとの差別化戦略』参照)とのことですが、日本側でどのぐらい海外への投資の裁量があるのでしょうか。

 日本で採用した人を海外に送り出すこともあります。他にも、例えば、米国でこういうチームをつくってほしいと伝えて、米国のファームが採用してくれれば、米国側で投資するでしょう。

 これは逆もそうで、日本でも外資系企業に関しては、日本側にケイパビリティーがないから、もっとパートナーを採用してほしいといった要望も当たり前のようにあります。ですので、その反対側もあり得るわけです。

 今までは米国側への投資というのはなかったのですが、国内が一定の規模感になってきているので、これからは米国側のファームがもっと腰を入れる局面になるはずです。

 前職のデロイト トーマツ コンサルティングでもさまざまな国でコラボレーションをやってきましたが、やはり一番難しいのは米国です。交渉が一番タフで、末端まで理解させるのが大変です。トップとトップで話しても、末端のパートナーから「そんなことは知らない」って言われて終わることもあります。

 ただ、EYはカルチャーがつながっているので、結構やりやすいし、実現できるという確信もあります。

――ファームのカルチャー自体が追い風になると。

 そうですね。EYのカルチャーもそうですが、貴田(編集部注: EYジャパンチェアパーソン 兼 CEO〈最高経営責任者〉の貴田守亮氏)が完全なグローバルパーソンなのも大きいです。EYの中で彼を知らない人がいないし、彼がジャパンのトップを務めていること自体がすごく価値があることです。

 なので、真面目にやればEYのつくりたい世界をつくることができると思っています。今は、「その世界に踏み出しませんか」というタイミングといえます。

――具体的にEYのカルチャーの特徴ってなんでしょうか。

 自分がEYに入社する際に、「コリージアル(collegial)」と言われたんですよ。合議的という意味です。だから、「近藤さん、とにかく売り上げとかそういうKPIはいいから仲良くやってくれって」と。

 コンサルタントでいうと、「トークストレート」って、あるじゃないですか。別に言葉をストレートに、侮辱する意味ではなく、コンフリクトを恐れずに議論をするという文化です。

 個人的にはコンサルはそれぐらいでいいと思うんですけど、EYの場合はトークストレートをやりすぎると、あまりいいことはないですね。だから相手をすごくリスペクトして、本当に合議的にいろんなことを決めていく。それがEYのカルチャーのベースです。ファームの戦略を立てるときにカルチャーは本当に大事です。

――国内で今期は10%後半ぐらいの成長率です。まだアウトバウンドの売り上げはそこまで想定していないと思いますが、グローバル戦略は中期的にどのぐらい成長に貢献することになるのでしょうか。

次ページでは、近藤氏が、新たな重要指標をベースとしたグローバル戦略が業績に与える影響を明かす。また、他のファームとは異なり、EYであれば実現できると考える根拠や、EYがグローバルで策定を進めている新戦略との関係性についても解説する。