東京都は2011年のうちに、国の通知や患者団体・障害者団体などの要請に応じ、非常時の電源に関する制度を整備した。静岡県・沖縄県なども、在宅療養患者の非常用電源に関して、先進的な取り組みを行っているという。

「でも、都道府県がやらないと、国から補助が出ないので、広がっていきませんね」(金澤さん)

 厚労省も、研究を継続している。また厚労省の外部からも、研究者らによる政策提言が行われている。もちろん、患者や家族などによる当事者団体も、様々な要請を行っている。

 東日本大震災の後、日本ALS協会も、人工呼吸器の外部バッテリーや手動呼吸器を健康保険の診療報酬に含めることを要請した。自費負担を伴わずに非常時の備えができることは、疾患と療養によって多額の出費を強いられている患者にとって、画期的である。

 またALSを含め、難病に罹患したことがきっかけで生活保護を必要とする人々は少なくないが、その人々にとっても福音となった。国民健康保険で可能なら、生活保護の医療でも可能だからだ。2014年には災害対策基本法が改正され、自治体は、災害時に「避難行動要支援者」である難病患者に対応することとなった。

 金澤さんによると、ジリジリと制度が前進してきた結果、現在、災害時対策として新規に国に要請する必要のあることは、見当たらなくなっているという。現在浮上してきているのは、制度やモノやカネというより“リテラシー”の問題だ。

ALSに人工呼吸器は必須
進まない停電対策の整備

 ALSは、進行性の疾患だ。進行のスピードには個人差があるけれども、歩行などの動作ができなくなり、声を発することも、自力で食事を飲み込むこともできなくなる。最後には呼吸筋が麻痺し、呼吸が困難になる。論文から典型的なパターンを拾うと、呼吸器を装着しない場合には診断から概ね3年弱で亡くなる。「鼻マスク」と呼ばれる簡易なタイプの呼吸器を装着しても、概ね3年半で亡くなる。

 気管切開を行い、人工呼吸器を装着すれば、診断から約6年間生きられる。中には、数十年にわたって生き延びる患者もいる。しかし、家族などへの介護の負荷から、呼吸器を装着せずに人生の終わりを迎える選択をする患者も多い。家族が呼吸器を装着しないことを望むため、家族のもとを離れて単身で生き延びるという選択をする患者もいる。しかし、気管切開と人工呼吸器を選択する患者は、患者の3割にすぎない。