景気動向を見るのは株価か原油か

 かつて、「株価は景気の先行指標」といわれていた。だが、株式市場は投機資金が主体であるため、景気や金融政策への「期待」を織り込みやすい。特にFRB議長がアラン・グリーンスパン氏となって世界的に広まった中央銀行と市場の対話により、金融政策の期待感が株価に織り込まれやすくなった。それは、各国の政策会合の前後で株価が大きく動くことが多いことからも明らかだろう。

 一方、原油価格は景気動向に価格が左右されやすい傾向がある。実際、世界的に景気の減速感が強まる中、原油価格はその水準を切り下げている。

 原油も投資商品となりつつあり、金融政策会合の前後で価格が変化することも事実である。しかし、株式市場と比べ、投機資金が占めるシェアは低く、原油価格は投機動向よりも需給バランスによって決まる。それは、下図の通り、原油の先物市場における投機資金の取引シェアはいまだ4割以下であることからも明らかだ。

 リーマンショック後に(金融機関に高リスクの自己勘定取引などを禁じた)ボルカールールが導入されたが、それ以前には欧米の投資銀行が潤沢な資金を背景に現物取引にも参入し、実際に現物の需給に影響を及ぼしていたこともある。それでも、原油市場の規模からすると、需給バランスに与える影響は軽微だったと考えられる。

 原油の生産者は年初に予定した生産見通しに従って生産するため、価格を決めるのは需要動向である。需要動向は日々変化するため、原油価格の日々の騰落はその時の景況感の変化をビビッドに反映していると考えられる。

 現在、原油価格は下落しているが、株価は上昇している。これは現在の株価が経済の実態から乖離して上昇している可能性が高いとも考えられる。イベントリスクが顕在化する局面では、原油と株価の価格乖離が解消することも十分にあり得るだろう。

 下図はS&P500とWTIの前年比での価格上昇率の推移だ。株価の上昇率はWTIの価格上昇率から少し遅れて変化していることが分かる。

 世界の景気見通しや足元の原油価格の動向を考えると、今年の株価は前年比でマイナス圏に沈む可能性が高い。