ジャン=ミシェル・バスキアの作品バスキアの代表作とされる《Fooey》。日本の高知県立美術館が所蔵しているところに、バスキアと日本との縁を感じずにはいられない。
ジャン=ミシェル・バスキア
Fooey, 1982

acrylic and oilstick on canvas
178 x 355.6 cm

The Museum of Art, Kochi

Artwork (c) Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

前澤友作氏が購入したことでも知られるバスキア。実は、日本は数多くのバスキアの作品を所蔵している国であり、バブル期の日本とバスキア本人の縁も深い。そんなバスキアと日本の不思議な関係を見てみよう。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

バスキアを観たいと
思えば日本に来ればいい

 絵には描き手の熱がこもっている。だから、絵がやがて“持ち主”を選ぶようになる――。

 ファッション通販サイト「ZOZO TOWN」の創立者として知られる実業家・前澤友作氏(43)が、日本円にして約123億円で購入したことで話題となった“バスキア”の作品は、その典型例といえよう。

 日本がバブル経済に沸いた1980年代、ニューヨークのアートシーンを駆け抜けたのがジャン=ミシェル・バスキア(1960年~1988年)だ。卓越した色彩使い、それまで誰も思いつかなかった文字をもアートとして用いるメッセージ性溢れた彼独特の描き方、だが堅さはなく、どこかチャイルディッシュな愛嬌を漂わせている…。そんな彼の描くアートは、ハンサムでファッションセンス抜群、そして20歳そこそこという若さもあってか、当時、ニューヨークのアートシーンを魅了した。やがて彼の描いた作品は世界のセレブの間で好評を博すようになる。

バスキアとバブル期日本の浅からぬ縁、親日家だった意外な素顔実業家・前澤友作氏の購入で知られる1982年の作品。バスキア作品でよく描かれている頭蓋骨は、バスキアが子どもの頃、母親から買ってもらった解剖図がイメージにあるという
ジャン=ミシェル・バスキア
Untitled, 1982
oilstick, acrylic, spray paint on canvas
183.2 x 173 cm
Yusaku Maezawa Collection, Chiba
Artwork (c) Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

 ストリートから出てきた若き天才画家――。そんな古き良き時代のアメリカンドリームを体現したかのような彼の背景も相まってか、当時、「経済大国」、言い換えれば「金満大国」と、世界から顰蹙の目を向けられていた日本にもやがて彼の作品が入ってくるようになる。

「日本は世界に例をみない“バスキア大国”なんです」

 こう語るのは、現在、森アーツセンターギャラリーで開催中の『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』(9月21日~11月17日〈主催:フジテレビジョン、森アーツセンター、特別協賛:株式会社ZOZO〉)の日本側監修者である、神戸大学教授で美術史家の宮下規久朗氏(56)だ。

 意外にも、今や日本は、世界のなかでもバスキア作品の所蔵数が多く、「バスキアを観たい」と思えば、日本に来れば数多くの作品が観られるのだという。