人間の高い社交欲は
ソーシャルメディアでは満たされない

 SNSから延々と飛び出すスロットマシンのような情報の奔流や、「いいね!」ボタンによる強力な承認欲求については本を実際に買って知っていただくとして、本稿では著者が2017年末に1600人を対象に行った集団実験「デジタル片付け」の方法と得られた知見をいくつか挙げてみるとしよう。

 まずデジタル片付けの目標は、テクノロジーに触れる時間を極力減らし、新たな活動ややりがいのある行動などを探したり再発見したりすることにある。その上で休止していたテクノロジーを再導入し、本当に自分の生活にメリットがあるかどうか検討するのだ。休止期間はとりあえず30日(一ヵ月)と著者は述べる。

 しかし、朝起きてから夜寝るまでスマホと一緒に生活している方ならば容易に想像できると思うが、これは相当に難しい。なにせ信号待ちや電車待ちの暇つぶしでもスマホを開いてはならないし、SNSのチェックをやめれば友人関係が疎遠になってしまうかもしれない。事実、著者の実験の参加者で、空いた時間に何をすればいいかわからず不安になったり、短期間だけのデトックスにしかならず30日後に元通りになったりして失敗した人が少なからずいたそうだ。

 こうした欲求には、より大きな充実感をもたらす質の高い余暇活動で抗うのが第一だ。たとえば趣味を見つけること。手持ち無沙汰になるとスマホに手が伸びるので、なるべく体を動かすものが良い。物質的な作品をつくる、他人と直に交流するといった活動がおすすめだ。本書ではスポーツジムでのフィットネスやボードゲームなどが挙げられている。

 また、それなりに勇気があると自負している人ならば、「いいね!」ボタンを押さないと決めてしまうのもありだ。思い切ってスマホのSNSアプリを全て削除し、パソコンからでしかつなげないようにして接続を困難にするという強硬手段もある。

 これに関して興味深い指摘がされている。人間は社会的動物なので、他者との交流もしくはコミュニケーションに喜びを感じる。SNSはソーシャルメディアなのだから、人間がSNSにハマってしまうのは至極当然の流れだ。実際、ある研究論文によれば、ソーシャルメディアを利用すると、控えめながら幸福度を上昇させるそうだ。しかしそれは刹那的なものにすぎず、ヘビーユーザーになればなるほど、孤独感や惨めな気分が増大していくとの分析もある。つまり、人間の高い社交欲は、ソーシャルメディアでは満たされないのである。