キャリアコンサルタント「確かに一度、キャリアコンサルティングはしましたから、本人が元気になり、ご依頼の趣旨には沿ったのでしょうが、気になることがあります。どなたが本人と直接話をして本音を聞き出しているのでしょうか? 上司は異動先での使命や任務をきちんと話し、本人の反応を確認していますか?」
人事担当者「当然、上司は本人に話していると思いますが、確認してみます。もしまだならすぐに実施してもらいましょう」
面談2回目
初回の面談から1週間後、Aさんから再度のキャリア相談依頼。
Aさん「驚きました。上司は異動を考えてくれていました。でも、キャリアコンサルティングで自分を振り返る時間を持っていなかったら、上司の話を冷静に受け止めることができず、断って会社を辞めていたかもしれません」
キャリアコンサルタント「良かったなあ。ただ、もともとの問題が解決していないと、どこに行っても同様の問題が起きる。例えば、異動先について、業務内容やメンバーについて何か教えてもらったり、自分で調べてみたかい?」
Aさん「いまは目の前の仕事に集中していますから、異動してから教えてもらいます。大丈夫です」
後日談
Aさんが報告に顔を見せてくれました。
「先日、友だちから『元の明るさを取り戻した』と言われ、母親からも『最近は思ったこと
をはっきり言うようになったね』と褒められました」
それを踏まえてキャリアコンサルタントは「君が言う社会貢献ができる部署ってどんなところなんだろう?」という問いかけをしました。
それに対してAさんは、「まずは目の前の仕事をしっかりやってから“社会貢献”で自分には何ができるか考えてみます。仕事でもプライベートでも、これまであまり真剣に考えてこなかった気がします」と答えました。
事例まとめ
若手社員が目の前の困難にぶつかり、退職を考える。そんな場面で、冷静に考えてもらい、内省するきっかけを提供することができました。
上司や人事担当者にも、職場で起きていることをしっかり見て、話を聴いて、手を打つことの大事さに気づいてもらえました。
また、一連のやりとりから、採用や配属、異動、評価について、制度上考えるべき点がないか検討してもらうきっかけにもなりました。キャリアコンサルティングのアンテナ機能、相談機能、提案機能が発揮された事例だと思います。