地上最強の断熱材
米中もまねできない独自技術

火星移住のカギは日本のベンチャー企業が握っていた!ティエムファクトリが開発生産するエアロゲル「SUFA」。世界最強の断熱材として、幅広い産業への応用が期待されている

 そのベンチャー企業は、ティエムファクトリ(本社・東京都港区)。京都大学発の技術を使い、独自のシリカエアロゲル「SUFA(スーファ)」を開発・生産している。

 エアロゲルは水分をたっぷり含んだゲルを乾燥させたもので、肉眼では見えないナノサイズの穴が全体に空いている。この穴が断熱効果を生む。既存の断熱材より格段に穴が小さいエアロゲルは、「地上最強の断熱材」とも呼ばれている。

 エアロゲル自体は1930年代に開発され、素材として存在はしていた。ただ製造には特殊な装置が必要で、非常に高コスト。宇宙・航空産業など、ごく一部でしか使われてこなかったのが実態だ。

 これに対しティエムファクトリは京大の中西和樹准教授(開発当時、現在は名古屋大学教授)が開発した、常圧での乾燥製法を採用。製造コストが格段に下がった。

 さらに同社は、世界のライバルメーカーが手掛けていない、「ほぼ透明のエアロゲル」や「板状のエアロゲル」を生産できる技術も持っている。前述のような火星のテラフォーミングができるのも、ティエムファクトリの素材がほぼ透明で、光を十分に通すからだ。

 ティエムファクトリの素材は、宇宙開発のような先端分野だけでなく、幅広い産業から注目されている。もっとも有望なのは自動車産業での活用。EV(電気自動車)ではエアコンを使うとエネルギー消費が激しく、航続距離が大幅に短縮されてしまう。エアロゲルでボディ全体を覆えば、従来よりも航続距離を延ばせる可能性がある。