医療側の課題もある。十分な診察もせず、依存性の高い薬を安易に処方し続けるクリニックの存在は長年問題になっていた。「まるでレストランでメニューを差し出すように、『どれが欲しいんですか』と薬のリストを見せる医師もいたと聞きます」(梅野氏)。典型的な事件が2007年の京成江戸川クリニック事件だ。依存性の高い向精神薬、リタリンを医師免許のない事務員らに処方させたとして、院長が逮捕された。

 現在は診療報酬の改定により、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期処方や、睡眠薬、抗不安薬の多剤処方について、処方料が減算されるペナルティーが科せられている。長年、放置状態だった乱処方にようやくメスが入った格好だが、前出の調査結果を見る限り、薬とうまく付き合えていない患者はまだ多そうだ。

 梅野氏は、今の医療制度自体を見直す必要があるのでは、と指摘する。

「本当は、医師もしっかりカウンセリングに時間を割くことで、患者さんの不眠を改善してあげたいと思っているはず。しかし、国が定めた今の診療報酬制度は、時間をかけて診察しても病院は収入を得られない仕組みになっている。効率よく診察し、患者数をこなさないと経営が成り立たないことから、処方中心の医療になっている面はあると思います」

 受診を検討している人は、睡眠外来など専門性の高い医療機関のHPで医師の経歴やコメントをチェックし、信頼できそうな相手か確認するといいだろう。あちこちの医療機関を渡り歩くドクターショッピングはよくないとされるが、受診してみて、もし「合わない」と感じたら、思い切って違うクリニックを訪ねてみるのもありだ。 

「2週間以上にわたってほとんど眠れない」など、深刻な不眠を発症している場合は1人で我慢せず、プロの助けを借りたほうがいい。同時に、減薬するときも医師の指示は不可欠だ。自己判断で一気に断薬したりすれば、不眠が悪化するだけでなく、重篤な離脱症状が起きてしまう。症状を注意深く見守り、歩調を合わせながら処方してくれる医師の存在は大きい。

「睡眠不足は不健康」という社会の風潮にいたずらに焦ることなく、「薬なしで眠れる日」を医師と二人三脚でめざしていきたい。