数年前までは多くの女性に化粧の習慣がなかった中国で、近年、20~30代の富裕層を中心に一大美容ブームが起こっている。中でも日本製の化粧品はブランドとして高い人気を得ているが、正しい選び方、使い方が普及せず、美容にはむしろ逆効果というケースも多い。「高い日本製は、面倒なことをしなくても使うだけで効果が出る」という既成概念を改め、顧客に化粧品一つ薦めるにも丁寧なカウンセリングを行う日本式美容の良さが理解を得るには、どうすればよいのか。(エステサロン運営会社・海外事業統括 八重樫由子)
女性に化粧の習慣がない
中国で日本式美容を広める
中国は、数年前まで、外出の時すら多くの女性が化粧をする習慣のなかった国です。こう聞くと、たいていの人は「えっ!?」と、あっけにとられた反応を示します。「化粧は外出時の当然のマナー」と考える日本の女性には、到底理解できない感覚でしょう。
反対に、中国の女性からすれば、「どうして、外に出るからといって化粧をしなくてはならないの?人にどう思われようと関係ないのに」と、率直な疑問が飛んでくるところです。
他人にどう見られるかを第一に考える日本人。ありのままの自分を最優先する中国人。私は、中国で日本式の美容を広める上で、「自分がきれいになること、相手をきれいにしてあげることの喜びを、中国の女性にどうやって理解してもらうか」を常に考えながら仕事をしてきました。
私は、石川県に本社を置くエステティックサロン運営会社で、海外事業の統括者として、化粧品などの商品開発や、中国のサロンでの経営指導を担当しています。この数年で中国経済が大きく発展を遂げたのに伴い、今でこそ当社の商品やサービスも、中国のマーケットで認知度が上がってきました。しかし、ここまでくるにはさまざまな試行錯誤がありました。
当社は2005年と07年、それぞれ上海にエステティックサロンの第1号店、2号店を出店し、私は、第2号店の店長を務めました。開店までには、中国独自の商習慣や常識の違いにずいぶん苦労を重ねたのですが、どうしても集客がうまくいかず、結局、2号店を出店してわずか半年後に、中国ビジネスから撤退することになったのです。
冒頭でお話ししたように、当時の大半の中国人女性は、外出時に化粧をする習慣がありません。エステティックメニューの一つである「脱毛」に至っては、「体の毛をそられるなんて、辱めを受けるに等しい行為」とすら思われていた時代です。それを考えれば、撤退は仕方のないことだったのかもしれません。