厚労省「断らない相談支援」への
いささかの期待と大きな不安
2019年5月から、厚労省で「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」が開催されている。目玉の1つは「断らない相談支援」だ。7月には、早くも「中間とりまとめ」が行われている。おそらく、12月に取りまとめられる2020年度予算案には、この検討会の検討をベースとした試行事業や制度化に必要な費用が盛り込まれるだろう。
しかし私は、率直なところ、「今度は、どこの誰に公金が渡されるわけ?」「これは地域住民の“動員”と呼ぶべきでは?」などという内心の反応を抑えられない。
「断らない相談支援」とは、どんな困難事例に対しても、既存の制度にメニューが存在しない課題に対しても、「断らない」ということだ。問題の解決には至らないかもしれないが、関係は切れない。いつでも相談に来ることができる。
その間に、本人と相談員との信頼関係が築かれるかもしれない。信頼できる人が1人いたら、「他の人とも人間関係をつくれるかも」という気持ちが持てるかもしれない。あるいは、本人がエンパワメントされ、結果として自分の困難に取り組んだり向き合ったりできるようになるかもしれない。1回や2回、1ヵ月や半年や1年でどうにもならなくても、関係が切れていなければ、いつか次の展開が訪れるかもしれない。
確かに、そうかもしれない。「断らない相談支援」は、心理学者の故・國分康孝氏が日本に広く普及させたロジャーズのカウンセリング技法、「来談者中心技法」との共通点も多い。来談者中心技法の中心は、「傾聴」を中心として本人のパワーを呼び起こすというものだ。