「事業提携では、とくにそれが成功したとき、当事者間で目的や目標の違うことが明らかになる。悪いことに、問題を解決するためのメカニズムが用意されていない。だがそれらの問題は、あらかじめ見通せるし、大抵は予防できる種類のものである」(『実践する経営者─成果をあげる知恵と行動』)
今日、提携は百花繚乱である。合弁をはじめ、情報収集、研究開発、マーケティング、その他事業活動のあらゆる局面で、多様な形態の下に行なわれている。ドラッカーが推奨してきたように、いまや多角化やグローバル化のための経営戦略として、最有力の手段となっている。
ところがこの提携が、せっかくうまくいっているとき、一転して失敗する。むしろ失敗の確率は、成功しているときに高まる。
ドラッカーは、これを防ぐための予防策はあるという。提携のメリットを説いていたとき、すでに豊富な先行例を教材に失敗の防止策まで説いていたのである。
第一に、提携を結ぶ前に、両社がそれぞれ目標とするものを明らかにしておくことである。たとえば合弁の場合、どこまで成長を許すのか。親会社と合弁会社のそれぞれの目標は、三年おきに見直していかなければならない。
第二に、いかにマネジメントするのかについても、あらかじめ合意しておく。そもそも、利益はどうするつもりか。配当か留保か。
第三に、誰がマネジメントするかを明確にしておく。その都度、いちいち両社の代表が集まって会議を開くわけにはいかない。
第四に、親会社それぞれのトップマネジメント内に担当の責任者を持つことである。
第五に、意見の不一致が生じたときの問題解決の方法について、合意しておくことである。そのための切り札が、いざという時のための外部調停者である。できれば、提携の解消権まで与えてしまう。あえて、そのような調停者を持つことにより、提携当事者双方の自制が可能になる。
「今日、あらゆる種類の提携が行なわれている。だが、提携は脆い。スタート時の失敗率は、自力での新事業の立ち上げや買収に比べてとくに高いわけではないが、むしろ成功したあと、深刻な、ときには致命的な問題が生ずる」(『実践する経営者』)