タンパク質やビタミン類など、身体に良い栄養素の知識が一般に浸透してきた。
一方、心や精神状態に良い栄養素は?となると、あまり意識されていないかもしれない。
英国とオーストラリアの研究グループは、精神疾患の治療において、サプリメント(サプリ)の安全性と有効性を評価した「質の高い」横断解析33件、1万0951人分のデータを詳細に分析。
うつ病や不安障害、統合失調症などの気分障害および精神疾患と、オメガ3多価不飽和脂肪酸(PUFA)と葉酸(ビタミンB9)などのビタミン類、マグネシウムや亜鉛などのミネラル類、およびアミノ酸系サプリとの関係を調べた。
このうち最も強い治療効果が認められたのは、大うつ病に対するPUFAで、抗うつ薬との併用で有意な上乗せ効果が認められた。
一方、メンタルヘルスに良いとされている葉酸については、活性化された「5メチルテトラヒドロ葉酸」が、大うつ病と統合失調症の陰性症状──意欲の欠如や判断力の低下に対する上乗せ効果があると認められた。
また、アミノ酸の「Nアセチルシステイン」は、気分障害全般と統合失調症の補助療法としてまずまずの効果が見込めるようだ。その他の栄養素は、有効性を示す確固とした証拠に欠けていた。
研究者は「サプリの評価は両極端になりがち」と指摘し、エビデンス(科学的根拠)に基づいて賢く活用すべき、としている。
ただ気を付けたいのは、サプリの効果も普段の食事あってのこと、という点だ。心が辛いときはどうしても食事が不規則になり、栄養不良やカロリー過多から心身の健康を損なってしまう。そこで一つのサプリやマルチビタミンに頼るのは本末転倒というもの。
何より本研究の対象になった栄養素は、全て食事から摂取できる。たとえば、大うつ病に効果ありと判定されたPUFAは青魚やサケから、もし魚が嫌いならナッツ類や大豆油由来のαリノレン酸から摂取できるのだ。
「自分の身体は、自分が食べたものでできている」。この真理は「心」にも通じる。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)