併せて、「共生」社会の実現で認知症の人の生活を支援するという従来の考え方に加えて、「予防」をもう1つの柱に据えた。「予防」と「共生」という表現になり、「共生」を二の次へと押しやってしまう。

「予防」を強調する素案の下地はあった。昨年12月に開かれた菅官房長官を議長とする認知症施策関係閣僚会議で、「予防」が初めてうたわれた。担当の厚労省を差し置き、官邸が「力ずく」で閣僚会議を設け、有識者会議はその延長線上にある。「予防」の軍団が形成され怒涛の寄りが始まる。

 だが、公表された大綱素案に対し、認知症の家族団体が強く反発する。当事者を支援する全国組織の公益社団法人「認知症の人と家族の会」は、「予防を強調すると、認知症になった人は努力が足りなかった、その家族も支援が不足していたと受け取られかねない。自己責任となってしまう。一層認知症への偏見を助長させる」と批判した。科学的に普遍化された予防法が確立されてはいないだけに、数値目標を掲げることに疑問を投げかけた。

 自民党と連立を組む公明党も「誤った受け止め方をされないよう配慮して」と官邸をけん制した。こうした思わぬ反論に慌てた官邸は、参院選が迫っていることもあり、急遽、素案の見直しにかかる。

 最終的には、6月18日の関係閣僚会議で大綱を決めたが、「70歳代人口に占める認知症の割合を6年で6%減らす」という数値目標は削除した。また、車の両輪と位置付けた「予防と共生」の文言も順番を逆転させ、「共生と予防」とした。

「70歳代での発症を10年で1歳遅らせる」
「目標」から外したのに「目指す」と表記

「認知症の人と家族の会」の鈴木森夫代表理事は「共生」への施策が後退することを懸念している。

「予防が柱に残れば、予防への期待をあおり、社会保障費抑制の切り札に使われる可能性も残る。だから、私は、予防を柱からも外すべきだったと考える」(9月11日の毎日新聞でのインタビュー)。