『週刊ダイヤモンド』11月9日号の第一特集は「5G大戦」です。次世代の通信インフラの基盤となる第5世代通信規格「5G」のプレサービスが9月から始まりました。そしていよいよ、2020年春に商用サービスの幕が上がります。盛り上がりを見せる5Gについて、企業は何を考えているのか。ダイヤモンド編集部は上場企業を対象にアンケートを実施し、期待や悩み、取り組み状況など企業の“本音”に迫りました。
あらゆる産業を激変させる5Gの商用サービスがいよいよ来春始まる Photo by Hiroyuki Oya
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ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天のキーマンが集結
ビジネスパーソンが大行列をなした「5Gサミット」

「事前予約をしたのに、入れないんですか」「すみません、満席で……」。

 10月16日、千葉市の幕張メッセの国際会議場には長蛇の列ができていた。開催されたのは国内最大級の家電・IT見本市「CEATEC(シーテック)」のイベント、「5Gサミット」だ。

 今年で20周年を迎えるシーテックだが、日本の家電業界の凋落とともに、最近は存在感が低下気味だ。今年の4日間の登録入場者数は14.4万人で、前年から1.2万人減った。入場者数が20万人を超えていた2000年代後半と比べると、ブースの客足もどことなく寂しい印象となっている。

 そうした中、5Gサミットの入場を待つ列は、往時のシーテックの熱気をほうふつさせるものだった。1000人を収容できる会場に詰め掛けたのは約1600人。立ち見であふれ、別会場で急きょ、中継する事態になった。事前予約がなければほぼ門前払いだったので、興味を持っていたビジネスパーソンは、実際の入場者数よりもはるかに多かったことだろう。

 5Gサミットがここまで関心を集めたのは、NTTドコモの吉澤和弘社長、KDDIの髙橋誠社長、ソフトバンクの宮川潤一副社長、楽天モバイルの山田善久社長と、国内の5Gのキープレーヤーが一堂に会したからだ。

通信キャリアのトップが勢ぞろいした5Gサミット。5Gで何が変わるのかに来場者の関心が集まった Photo by H.O.
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  サミットの目玉は、「5Gで何が変わるのか」という公開討論。吉澤社長は「リアルとバーチャルが融合し、世界が進化する」と語り、髙橋社長は「消費者向けは、特別なエリアで特別な体験がコンセプトになる」と述べた。また、宮川副社長は「VR(仮想現実)、AR(拡張現実)がはやりだす時期が訪れ、その後、何でもつながるのが当たり前の世界が始まる」とし、山田社長は「ゲームの対戦が圧倒的に違う体験に変わる」と語った。

 公開の場とあって手の内を隠そうとする雰囲気もあったが、9月にプレサービスが始まり、20年春に商用サービス開始を控える5Gについて、通信キャリアはどんな構想を描いているのか。迫り来る5G時代に対応するためのヒントをつかみたい。こんな思いが、会場の熱気を生んだのだ。

期待は?悩みは?取り組み状況は?
5Gアンケートで見えた企業の“本音”

 注目度が急上昇中の5G。実際のところ、企業は5Gについてどう考えているのか。そこで本誌は、上場企業2000社を対象にアンケートを実施し、本音に迫った。

 5Gはあらゆる産業を変革させると喧伝されている。ただ、20年3月に商用サービスが始まるとはいえ、実際のビジネスに影響してくるまでには業界によって時間差があるだろう。

 例えば動画やゲームといったスマートフォンで楽しめる業界は、5Gの商用サービス開始から対応することを想定していなければ、出遅れて痛い目に遭う。その一方で、人の命に関わる医療や公道での自動運転といった領域が5Gによって変わるのは数年先だとみられている。

 それでは、企業は5Gの波が自社にいつ到来すると考えているのか。まずはずばりと、「5Gが自社のビジネスに変化をもたらすのはいつ?」と聞いた。

 最も多かった回答は「1~3年後」で45%。「1年以内」の5.8%と合わせ、3年後の22年までに、過半数の企業がビジネスの変化を想定しているという結果になった。

ベンツやファーウェイから北海道の農家まで
5Gを有効活用する5か条を大解説

『週刊ダイヤモンド』11月9日号の第一特集は「5G大戦」です。ラグビーワールドカップの開幕に合わせ、5Gのプレサービスが9月から始まりました。そしていよいよ、2020年春に商用サービスの幕が上がります。

 5Gでは「高速・大容量」「低遅延」「同時多接続」の3大要素が4Gから進化します。ですが、スマホでの高精細な映像のダウンロードが早くなることが5Gのメリットだと理解していると、その本質を見誤ることになるでしょう。

 5Gが期待を集めるのは、産業応用でその真価を発揮するから。製造業やインフラ、医療などさまざまな産業を変え、新たな競争を生み出す可能性を秘めているのです。

 今回の特集で、ダイヤモンド編集部は上場企業2000社を対象にアンケートを敢行。取り組み状況や専門部署の有無、期待や悩みなど、あらゆる側面から企業の5Gへの“本音”に迫りました。

 また、「5Gを活用したビジネスが浮かばない」という声もよく耳にします。そこで、実際に5Gを利用したドコモやKDDI、JAL、メルセデス・ベンツ、ファーウェイといった企業や北海道の農家などさまざま活用例を徹底取材。そこから見えてきた5Gを有効利用するための5つのポイントをまとめました。

 さらに、投資家にとっても5Gはホットなテーマです。スマホ、ゲーム、基地局、部品、素材、部品…。あらゆる産業にインパクトをもたらし、経済効果46.8兆円ともいわれる5G時代の注目企業77社の動向をまとめました。

 来春の商用化に向け、さまざまな企業がしのぎを削る5G。その最前線に迫った一冊です。

(ダイヤモンド編集部 大矢博之)