民間エコノミストの2019年10~12月期の個人消費の前期比予測

数字は語る 1.58% 出所:日本経済研究センター「ESPフォーキャスト調査(10月)」

 10月1日に消費税率が10%へと引き上げられた。前回2014年の8%への引き上げの際は、増税後に家計の消費活動が大きく冷え込んだため、今回も増税後の個人消費の動向が注目を集めている。

 筆者を含めた民間エコノミストの多くは、今回の増税が消費の深刻な落ち込みを招く懸念は小さいとみている。民間エコノミストの経済見通しを集計した日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」によると、19年10~12月期の個人消費の予測平均は前期比▲1.58%と、前回増税時(14年4~6月期:同▲4.8%)ほど落ち込まないとしている。これは、今回の増税は税率の引き上げ幅が前回増税時より小幅で、家計の負担感が小さいためである。さらに、キャッシュレス決済時のポイント還元といった増税前後の需要を平準化するための政策が実施されていることで、駆け込み需要とその反動減も限定的という見立てである。

 では、実際の個人消費は、そうした予測通りに推移しただろうか。

 公表が早い業界団体などの統計を見ると、全体として駆け込み需要は限定的なようだ。まず、家電量販店大手の9月の売上高は、前年同月に比べ6割前後増加した。これは、前回増税時並みだ。

 一方、自動車は、駆け込みがあまり見られなかった。7~9月期の自動車販売台数は前年同期比+7.5%と、前回増税の直前期(同+20.9%)を下回っている。さらに、ティッシュペーパーや洗剤など日用雑貨の駆け込みも限定的である。店のレジで商品が販売されたときに記録されるPOSデータを基に作成された日経CPINowの日次売上高を見ると、前回は増税の2週間前から見られた売り上げの大幅な増加が、今回は直前1週間にとどまっている。

 増税後の消費の落ち込みも、前回ほど深刻化していないようだ。実際、食料品や日用雑貨の売り上げは、増税後10日程度で前年並みの水準を回復している。最終的な評価は、9月や10月の政府統計の公表を待つ必要があるものの、日本経済はなんとか消費増税を乗り越えたといえるのではないか。

(日本総合研究所 調査部 副主任研究員 村瀬拓人)