それ以外にも、有期労働契約の場合は期間満了の30日前に予告することや雇用保険の資格喪失手続きの必要性、在職中の有給休暇の取得を雇用主側が拒否できないことなど、懇切丁寧な説明が続く。
これらの説明それ自体は正しい。だがその一方で、労働法制上、本部が長年放置してきた問題がある。
コンビニの加盟店では、従業員が社会保険に加入していないケースが多い。近年、日本年金機構がこうした加盟店の捕捉と加入促進に取り組んでいる。そのため、低収益で保険料負担ができない加盟店の場合、オーナーが法人をやめて加入基準の低い個人事業主となる、法人成りならぬ“個人成り”が発生している。ただ個人事業主であっても、社会保険の加入基準を満たす従業員が常時5人以上いれば強制加入となるため、個人成りは根本的な解決策にはならない。
社会保険への加入も法律で定められた義務だが、SEJに限らずコンビニ各社の本部はどこも「加盟店の責任」であるとして、まともに対応してこなかった。その姿勢は今も変わっていない。
こうした事態を直視しないまま、いざ時短営業を始めたいと希望するオーナーに対して、労働契約上のルールと手続きを事細かに求めるSEJの姿勢に違和感を持つオーナーは多い。まず従業員を社会保険に加入させる余裕のないオーナーに対して、何らかの手立てをするべきではないか。
本部がわざわざガイドラインで雇い主の責任について事細かな説明を繰り広げる狙いについて、前出のベテランオーナーは、「公正取引委員会や経済産業省へのアピール」に加え、「さも複雑なルールや手続きが求められるように見せて、気が弱く従順なオーナーの時短希望を封じたいのではないか」との見方を示す。また別のセブンの現役オーナーは、「幹部はマスコミで時短営業を認めると言いながら、現場で実質的に認めないという状態になるのではないか」と危惧する。
業界2位のファミリーマートは10月から、全国600超の加盟店で時短実験を始めた。この実験への参加オーナーを集める説明会では、6〜7月に行われた小規模な実験の結果について、期間中の個店別の売り上げや従業員数の実数、オーナー利益の増減の傾向まで詳細を開示していた。SEJの時短実験が、参加した加盟店数程度しか公表されていないのと比べ、その姿勢には大きな違いがある。
加盟店支援の中心となる時短営業の容認について、SEJの本気度は今後も問われ続けることになる。