お互いに努力しても最終的に破たんしてしまうケースもある。

「平凡な家庭で育った」と自称するFさん(32歳男性)が妻に迎えた女性は、裕福な家庭で育った“いい所のお嬢さん”だった。

 金銭感覚の違いは交際当初から感じられていたが、「結婚後は妻が夫の家に入る」という認識が妻本人と妻の両親に強く、Fさんは「そんなものか」と思って自然とそれを受け入れていたそうである。妻は結婚後、Fさんの金銭感覚に合わせて暮らすつもりである旨を宣言していた。

「いざ結婚生活が始まり、金銭感覚の面で妻と自分ではやはりだいぶずれていることがわかってきました」(Fさん)

 妻は食材や家電や家具など、何か買い物をするときに必ず値段が高くて質が良い物を欲した。一方Fさんは質がある程度確保できていればなるべく安い物が良いと考える主義である。Fさん夫婦は互いの考えを理解し、すり合わせの努力をしたようである。しかしうまくはいかなかった。

「『これでも質は相当落として選んでいる』と妻は言うんですが、例えばダイニングテーブルを見繕うとき、希望のものを10万円から5万円にグレードダウンした、というレベルで、私からすると『本当は1万円くらいのでいいけど、2万~3万出せば十分なクオリティーのものが手に入るよ』という感じで、何かとこんな具合でした」

 なかなか切ない話である。互いに努力はしていても、初期の段階から金銭感覚の隔たりが大きすぎるのでお互いが認め合えるような“十分な努力”にまで至らないのである。

 妻の実家は妻に援助するという形でFさん夫婦のこうした金銭感覚にまつわる問題を解決したがったが、Fさんはそれがどうしても嫌だった。

「ご両親のお気持ちはわかりますし、私にかい性がないからこうなってしまっているという負い目もありましたが、それでもやはり一家のことはなるべく私と妻で解決していくべきだと考えていました。結婚したての頃は『一家の長として自分の家庭を切り盛りしていかなければならない』と気負っていた部分もあります」

 この頃からFさん夫婦はケンカをすることが多くなり、やがて離婚に至った。結婚して2年目の破局であった。

 Eさん夫婦は比較的初期の段階から衝突し、Fさん夫婦は努力が実を結ばず衝突するようになった。相手の金銭感覚が許せなくなるとその亀裂がさまざまな部分に広がって、最終的に関係性が破綻してしまうことは往々にしてあるのかもしれない。

 離婚の理由を語るときよく使われる言葉に“価値観の相違”というのがあるが、金銭感覚の齟齬もまさしくこれに当たる。

 別々の環境で生まれ育ち、そしてまた別々の環境を持って生活していた(仕事していた)、元は他人同士の2人なのだから、どこかのポイントで価値観が違うのはごく当然のことである。相手が持つ、自分とは異なった価値観を認めリスペクトすることができれば最良だが、「金銭感覚が違う」となると話は違ってくる。

 伴侶が浪費家、または吝嗇家(りんしょくか)だとして、その性質を愛せる人ははたしてどれだけいるだろうか。

 しかし金銭感覚の違いについては、今回紹介したような、共通の目的の設定や相互自立システムの導入によって解決することが可能である。もし努力の末関係が破綻することがあっても、「それだけ相性が良くなかった」と見ることもできるので、あながちマイナスではなく、長い目で見てお互いにとってプラスのことなのかもしれない。