前回、子どもとインターネット、携帯電話をめぐる環境がいかに悪化しているかを見てきた。しかし、その対策は一筋縄ではいかないようだ。専門家のあいだでも意見が分かれている。
日本全国で、小学生、中学生の携帯電話所持率は上昇の一途だが、そんな全国の動向とは逆に、携帯電話の所持率が劇的に減少している町がある。
石川県野々市町だ。人口8万人にすぎないこの町は今、メディア研究者や通信系企業の大きな注目を集めている。
野々市町では2003年に「プロジェクトK」として小学生と中学生に携帯電話を持たせない運動を始めた。携帯電話の内蔵カメラで撮影した写真をメールで送れる写メールが流行し始めた頃だ。
「現場の先生から、携帯電話を使ったいじめが報告され始め、これはまずいと思った」と、桝谷泰裕・生涯学習課課長補佐は振り返る。
2007年12月3日、野々市町の文化会館に町内のすべての中学2年生が集まった。14歳で成人を迎えた古来の元服の儀式を現代風に行なう「立志式」に参加するためだ。この町独自の式典は、同時に携帯電話、インターネットを使用しないことを宣言する儀式でもあるように見える。
式では生徒代表や町長が何度も携帯電話やネットの危険性について触れ、ゲストに招かれた戸塚滝登・早稲田大学こどもメディア研究所客員教授による携帯電話の危険性に関する講演も行なわれた。