日本は有効求人倍率がバブル期並みの1.8を超える「人手不足」にもかかわらず、実質賃金が持続的に下落、今年に入ってからは名目賃金も低下する「異常」な状況が一段と悪化しかねない。

 さらにこの問題は年金制度にも波及する。

 現役世代の賃金の低下は、高齢者の生活を直撃することにもなる。実質賃金が持続的に下落する状況が続けば、年金財政が成り立たなくなっていくのだ。

 年金に対する不安が強まっているなかで、安倍政権は、例年なら6月に公表する年金財政検証を8月の参議院選後まで先延ばしした。

「老後の貯蓄不足2000万円」問題が急浮上し、年金問題が参院選の争点になるのを恐れたからだが、年金担当の厚労政務官だった上野議員は、参院選前から、年金財政検証で概ね所得代替率は50%以上を確保できるかのような国会答弁をしてきた。

 選挙への影響を少なくするため、年金の「不都合な真実」を隠蔽したといってもいい。

 参院選でなんとか勝利し改造内閣を発足させた後の10月4日、安倍首相は所信表明演説で、「8割の方が65歳を超えて働きたい」と願っていると言い、「70歳までの就業機会を確保します」と強調した。

 この発言の根拠は、2014年度の「高齢者の日常生活に関する意識調査」とされるが、調査ではそんなことにはなっていない。

 調査によると、就労希望年齢を65歳以上としている人は「8割」ではなく全体の55.3%だ。一方で、65歳以上で「家計が苦しく、非常に心配である」と答えた人が60.2%を占めている。

 多くの人々が「働きたい」というのは、年金はじめ社会保障の削減が続き、老後に不安があるから働かざるを得なくなってきているということだろう。

年金制度は「維持」されても
給付削減で老後不安強まる

 この問題でも政治の責任は大きい。

 年金不安の第1の原因は、人口推計で、少子高齢化の予測を甘くしてきたことがある。

 国立社会保障・人口問題研究所の高位、中位、低位の3つの人口推計のうち、政府は常に中位の推計を選んできたが、少子化や高齢化の実際の数字はずっと中位の推計を下回ってきた。

 予想以上に、年金給付をもらう人が増えて、年金保険料を納める人が減っていけば、年金財政が悪化するのは当然だろう。