プロ・趣味層以外はほぼいなくなる?
中長期ニコン購買層の悲惨な見立て

 ニコンは今期と来期、映像事業の構造改革を進める。関連費用として今期50億円を計上し、来期も同規模を計上する予定だ。

 馬立社長兼CEOは「今まで以上に踏み込んだリスクコントロールが不可欠」「プロ・趣味層のさらなる満足度向上に資する戦略へ集中する」とし、製品開発の選別、拠点・販社・人員の最適化を進める。さらなる市場縮小下でも一定利益を確保できるようにするためだ。

 ニコンの売上高ベースの購買層イメージは、2019年3月期(約3000億円)は「プロ・趣味層」と「それら以外」が半々。それが中長期先になると、「プロ・趣味層」のボリュームを堅持するものの、「それら以外」がほぼなくなる厳しい予想だった。高機能化が進むスマートフォン内蔵カメラにさらにシェアを奪われることや、ニコン自身が初・中級機から手を引いていくことを意味するようだ。

 プロ・趣味層でボリュームを堅持するならば高級機であるフルサイズ規格、とりわけ成長市場のフルサイズミラーレスカメラで一定のシェアを得なければ話にならない。だが現状はそこも厳しい。

「他社と比べて製品そのもののクオリティーは問題ないのか」。会見では、フルサイズミラーレスカメラで次々と新機種を投入してフルサイズ市場(ミラーレスと一眼レフ)で18年世界シェア1位になったソニーを意識した厳しい質問が飛び出した。池上博敬映像事業部長は「競争力では課題があると考えていない」と答えるものの、「ニコンのフルサイズミラーレスは2機種なので機種数なりのシェア」とフルサイズミラーレスへの進出の遅れを認めざるを得ない苦しい説明となった。

映像赤字“先輩”のオリンパスと
同じ言い訳は許されない

 映像事業の位置付けを馬立社長兼CEOは「それでも根幹事業。応用範囲が広い貴重なアセット」と釈明し捲土重来を期すが、この発言にはデジャブが漂う。そう、オリンパスの歴代社長も常々、赤字の映像事業について似たような釈明をしてきたからだ。

 オリンパスの映像事業は、11年3月期以来、わずかに黒字だった1期を除いて毎年営業損失を計上している。だが両社の決定的な違いは映像事業の貢献度だ。今のオリンパスは医療事業が売上高の8割、営業利益のほとんどをたたき出し、かつて主力だった映像事業は見る影もない。それに対して、ニコンの映像事業は売上高の4割、営業利益の3割(19年3月期)を生んでおり、今でも根幹事業だ。言い換えればオリンパスには赤字部門を背負う余裕があるが、ニコンはまだそれが許されるほどには他事業(精機、ヘルスケア、産業機器など)が育ってきていない。

 構造改革の継続で21年3月期の映像事業も厳しい見通しのニコン。来期中には映像機器メーカーにとっても4年に1度の“書き入れ時”であるオリンピックの自国開催がある。だが、ニコンだけはお祭り騒ぎとはいかない状況になってきた。