自律神経と
テストステロンの密な関係
全身的な体調コントロールは、ホルモンと同様に、自律神経も無意識に動いています。ご存知の方が多いでしょうが、ここで「自律神経」について簡単に振り返っておきましょう。
人間の体は、「昼の神経」と言われている心身をアクティブにする「交感神経」と、「夜の神経」と言われ、心身をリラックスさせる「副交感神経」の、2つの自律神経のバランスによって保たれています。
そのバランスが崩れ、交感神経が優位になると、体の調子が悪くなります。たとえるならば、副交感神経というブレーキがきかず、アクセルを踏みっぱなしにして暴走している自動車のようなものです。
具体的な症状としては、顔のほてり、動悸、手足のしびれ、めまい、肩こり、腰痛、頭痛といった不調が現れてきます。これが、いわゆる「自律神経失調症」と呼ばれるものです。
自律神経のバランスが崩れる原因は、主に「ストレス」。激しい怒りや緊張、不安を覚えると、交感神経が急激に優位になります。心臓の鼓動が激しくなり、血管は収縮。すると、先ほど述べたような心身の不調が表れてきます。
つまり現代に暮らす人たちは、仕事のストレスや、寝不足などで、交感神経が優位な状態がずっと続いてしまうことが多いのです。
その自律神経機能を乱す原因に、ホルモン変化も影響しています。
女性の場合、閉経以降女性ホルモンが減ることで交感神経が優位な状態になり、ホットフラッシュと呼ばれる上半身ののぼせ、ほてり、発汗に代表される、前述したような自律神経失調症が襲ってきます。
男性もテストステロンの低下で、女性同様の症状が現れます。たとえば、前立腺がんの患者さんは、テストステロンを抑えこむ治療を行うのですが、そうすると、うつ症状や、顔のほてり、動悸といった、人工的に更年期障害が作られ、自律神経失調症そのものの不調が現れます。
自律神経の乱れがテストステロン分泌を抑制し、テストステロン低下がさらに自律神経の乱れを加速させるという悪循環です。
中高年の男性は、中間管理職につくなど、強いストレスを受けやすい環境にさらされているうえに、加齢によって男性ホルモンが低下してきているので、一層、自律神経のバランスが崩れやすい状態なのです。