再選を目指す米国のトランプ大統領が、2017年の大型減税に続く追加減税の提案に向けた用意を進めている。その背景には、2017年減税への評価が芳しくないという事情がある。トランプ大統領が経済面での実績を再選の切り札とするためには、改めて減税を強みに戻す必要がある。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)
トランプ大統領が「減税2.0」で
目論むレーガン税制の再現
米国のトランプ大統領が、2017年の大型減税に続く第2弾の減税への意欲を示している。2019年11月、12日にニューヨークで行った演説では、「米国経済復活の中心には、米国史上で最大の減税、税制改革がある」と指摘したうえで、さらなる減税の可能性に言及した。
トランプ大統領が追加減税に言及するのは、これが初めてではない。中間選挙を控えた2018年10月には、中間層に10%の減税を行う方針を明らかにしていた。2019年8月には、公的年金等の財源である給与税の減税をほのめかしたこともある。いずれも具体的な提案には至っていないが、トランプ大統領が再度の減税を意識し続けているのは間違いない。
「減税2.0」と呼ばれる現在検討中の追加減税は、来年の大統領選挙に向けた公約として提案される見込みである。財務省の高官は、減税2.0の具体案が明らかにされるのは、来年半ばになるとの見通しを示している。選挙前の減税実現を目指すのであれば、来年2月頃に発表される予算教書で具体案を示すのが普通だが、そうしたスケジュールが念頭に置かれているわけではないようだ。
トランプ政権で減税2.0への道のりを率いるのは、クドロー国家経済会議(NEC)委員長である。クドロー委員長は、すでに9月の段階で追加減税の準備を始める方針を示していた。また、今回のトランプ大統領の演説に先立つ11月1日にも、減税2.0の実現に向けて共和党議員と接触していることを明らかにしている。