手柄横取り社員人の手柄を平気で横取りする人達。その心理メカニズムはどうなっているのだろうか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

どんな職場にもいる「人の手柄を平気で横取りする社員」。なぜ臆面もなくそんなことができるのかと疑問に思う人も多いだろう。その心理メカニズムはどうなっているのか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

 職場の人間関係の悩みや不満について話を聞くと、どの職場でも必ずといっていいほど出るのが、人の手柄を平気で横取りする上司や同僚への不満だ。

 そのような相手についてあれこれ実例をあげて愚痴をこぼしつつ、「でも、どうしてそんなことが平気でできるんですかね」「どういう神経してるのか、まったく理解できません」などと疑問を口にする。

 確かに、普通の人であれば、そんな非常識なことはなかなかできないだろう。彼らの行動を理解するには、その心理メカニズムを知る必要がある。

部下の手柄を
独り占めする上司

 20代の男性Aさんは、何かと手柄を独り占めする上司への腹立たしさと不信感を口にした。

「たとえば、僕のアイデアをもとにした企画書を作成した課長が、部長からほめられたことがあったんです。そのとき、課長は僕の貢献には一言も触れず、まるで自分ひとりで思いついたように自慢気に話をしているんですよ」と事実関係を説明し、「そういう課長の気持ちがわからない」という。

「べつに僕の名前を出してくれなくてもいいですよ。でも、『部下と一緒に知恵を絞った』とか言ってくれてもいいじゃないですか。その場に僕もいるのに、なんで『自分ひとりで』と平気で言えるのか理解できないんです。普通、気まずくてそんなこと言えないと思うんですけど…」

 だが、この手の上司には気まずいといった感覚がまったくない。だからこそ平気で部下の手柄を独り占めできるのである。

 20代の女性Bさんは、同じく手柄を独り占めする傾向のある上司について、次のようにこぼす。

「取引先との打ち合わせ会議に向けて準備をしていたとき、私の見つけたある資料がきっかけで面白い提案ができて、それが取引先に採用されたんです。そのことを上役に報告するのを私は同席して聞いてたんですけど、上司は『私がたまたま面白い資料を見つけ、それをヒントに提案をまとめたんです』、なんて平気で言うんです。隣に私がいるのに、なんでそんなうそを言えるのか。もう人間不信っていうか、課長の人格が信じられません」

 実は、このような上司もけっして珍しくない。なぜそんなことをして平気なのだろうか。