医師が予防接種を勧める
インセンティブは乏しい?

 医師の中には、「医は仁術であるから、利己的に自分の利益だけを考えて行動すべきではない」と考える立派な方が多いと思うが、本稿においては「自分の利益だけを考える医師」のインセンティブについて考えてみたい。

 上記のように、予防接種をしても多くの人は感謝してくれず、「予防接種を受けたのに罹患した。無駄だった」などと思う人もいるだろう。まして「A氏とB氏が予防接種を受けたおかげで、A氏とB氏の同僚である自分が罹患を免れた。ありがとう」などと言ってくる人は皆無だ。

 一方で、予防接種を受けずに罹患した人は、決して自分を恨むことはないだろうし、治療してあげれば感謝してくれる。それならば、来年は予防接種など勧めずに、多くの人が罹患して治療を受けに来るようにする方が、感謝されることになる。

 金銭的面では、予防接種より治療の方が儲かるのか否か、筆者は医師のコスト構造を知らないが、素人の推測では治療の方が儲かるのではなかろうか。

予防接種が世の中の利益になるなら
政府が推進するべき

 このように、各人の自由意思に任せておくと、予防接種を受ける人は増えそうにない。しかし、予防接種によって世の中に迷惑をかけずに済む点を考慮すると、皆に受けてもらいたい。そうであれば、政府が予防接種の代金を負担すべきであろう。

 予算の制約から、「全国民に無料で」というわけにはいかないかもしれない。その場合には、「全員に半額を補助する」か、あるいは本当に接種してほしい人は無料にするという方法が考えられる。

 その場合、「満員電車に乗って通勤する人(罹患すると多くの人に迷惑をかける)」「老人ホームの入居者(集団感染すると深刻な被害が発生しそう)」等が優先されるのか――。誰を優先するかは、非常に難しい問題である。