ただ、大塚家具の財務諸表を詳細に検討した前出の審査担当役員によると、大塚家具のビジネスの特徴は、粗利益率の高さにある。

 15年に経営方針の違いから勃発した “父娘戦争”を機に企業イメージが悪化し、売上高は減り続けるが、粗利益率は一貫して50%以上を維持している。粗利益率が高いということは売り上げが増加すればするほど高角度で増益をもたらすが、売り上げが損益分岐点を下回ると一気に赤字が拡大する。「例えていえば、客離れによって業績不振になった高級レストラン」と審査担当役員は解説する。損益分岐点を超える売り上げさえあれば、利益は急速に回復すると指摘。大塚家具が崖っぷちから生還することも夢ではないと続ける。

増資は時間との勝負、引受先は現れるか

 とはいえ、財務諸表から読み取れる18年度の損益分岐点超えの売上高は約420億円。今年度に入り、大型店舗である仙台店などを閉めたことから損益分岐点売上高は400億円程度まで低下したとみられるが、9カ月決算で200億円をようやく超える売り上げしか出せない企業が何をどうすれば達成できるのか。

 複数の銀行関係者によると、大塚家具は最近になって外資系ファンド出身のアドバイザーを雇い入れ、起死回生の策として、海外のファンドをはじめ、複数の国内の事業会社にも増資に応じるよう打診を始めている。ただ、普通のファンドでは手が出しづらい時価総額ということもあり、現在想定されているのは、事業シナジーが見込め、売り上げ増強に結び付く事業会社だ。

 大塚家具は昨年以降、すでに資本・業務提携している貸し会議室大手のティーケーピーをはじめ、ヨドバシカメラやヤマダ電機などの家電量販店にも増資引き受けを求めた。ヤマダだけはなんとか業務提携にこぎ着けたものの、残りはご破算になった。「昨年は銀行ともめ、振り回された揚げ句に決め切れなかった」と関係者は明かす。

 だが、今回ばかりはさすがに後がない。大口取引先のホテル業界から住宅メーカー、さらにはリアル店舗を持たないネット企業にまで声を掛けているとされ、久美子社長の危機意識もようやく臨界点を超えたのかもしれない。タイムリミットは来年3月だ。