“救済”する今造も疲弊
中韓との競争で過剰設備問題が浮上
翻って、今造を突き動かしたものは何だったのか。「日本の1位、2位連合で世界競争に勝つため」。12月2日、今造が毎年、系列の今治国際ホテルで大々的に行う取引先を集めた忘年会で、檜垣幸人・今治造船社長は今回の資本業務提携の目的をこう述べていたという。
具体的なメリットは、まず日本勢同士のたたき合いを回避できることだ。今造とJMUは、ばら積み船の受注で激しい競争を繰り広げていたという。
もう一つは、業務提携の内容としても表明されている「生産体制の効率化」だ。詳細は明かされていないが、将来的に想定されるのは2社の拠点の統廃合である。
市況下落時でも底力があるといわれる今造だが、実は足元の造船事業は「重工系にたがわず、過当競争で疲弊している」(取引先首脳)。実際に、今造は取引先から、「中韓勢との価格競争が激しく、なかなか受注できていないのに、10カ所も造船所を保有しているのは設備過剰だ。拠点を整理して競争力を上げてほしい」という“苦言”が呈されていたほどだ。
折も折、JMUでも、前身のユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドの統合以来、着手することがなかった拠点の統廃合が「生き残るための絶対条件」(造船業界関係者)であるとして、抜本改革が急務とされていた。
確かに今、造船各社が受注するには「連続建造、短期納入が欠かせない」(JFEHD幹部)ため、規模の拡大には一定の意味がある。ただし、すでに持て余している両社の造船所を全て温存していては、設備を埋めるためだけの無理な受注が繰り返されるだけだ。
さらに、JMUには痛みを伴う構造改革も必要だろう。例えば、今造流の厳しい仕入れ交渉術の習得や、高い給与水準の引き下げである。
そして、造船業界では早くも「この2社連合に合流する造船会社があるのではないか」(前出の造船業界幹部)との観測が広がっている。国内ツートップ連合の誕生により、いよいよ「造船再編」最終章の幕が上がった。