JMUはその川を渡って今造との資本提携にまで踏み込むというのである。おまけに、今回の資本提携では、今造によるJMUの新株の引き受けが検討されている。そのため、複数の造船業界関係者は、「今造による事実上の救済スキームだ」と口をそろえる。
今でこそ国内ナンバー1は今造、ナンバー2はJMUと建造量での立場は逆転しているが、オーナー系は重工系に学んで技術を培ってきた歴史がある。そのため、「重工系がオーナー系の傘下に入った」(同)とされる“世紀の提携”の一報が知れ渡ると、造船業界には激震が走った。
今造による出資比率は未定だが、造船業界では早くも「JFEHDとIHIの出資比率を超えない範囲、つまり『30%まで』にとどまるだろう」との臆測が飛び交っている。
そんな驚きの提携が実現してしまうくらい、造船市況は悪い。リーマンショック前後に大量に造られた船が滞留して供給過剰が続いているというのに、中国・韓国勢が強烈な価格攻勢を掛けているからだ。
特に韓国は自国の雇用を守る目的で造船業に公的助成まで行っているとされ、船価低迷と価格競争から一向に抜け出せない状態が続いている。
実際に、日本勢の仕事は枯渇していた。「みんな手持ちの受注が2年分を切り、焦りを感じていた」(重工系造船会社役員)という。
おまけに今年に入り、中韓勢は再編にまで打って出た。韓国では、世界最大手の現代重工業が大宇造船海洋の買収を表明。中国でも、2大国有造船グループの中国船舶工業集団と中国船舶重工集団が統合を決定し、ライバル2国で巨大造船会社が誕生してしまったのだ。「何としてでも、日本で造船業を続けていきたい」。JMU幹部は今造との資本業務提携の理由をこう説明するが、JMUにとってはまさに、生き残りを懸けた一世一代の決断だった。
決断の後押しをしたのは、専ら大株主のJFEHDだったといわれている。
かねて柿木厚司・JFEHD社長が事あるごとに造船業界における再編の必要性について語っていたのは周知の事実だ。2019年4~9月期決算で、「円高進行が響き18年3月期に続いて赤字に陥ったことで、JMUはいよいよJFEHDからの再編圧力から逃れられなくなったのだろう」と造船業界幹部はいう。