医師の簡単な問診を受け、注射は看護師さんがしてくれた。「筋肉内注射だから、普通の予防接種よりは痛いかもね」と脅かされ、緊張の面持ちで受けた後、「あーだめ、ふらふらする」と訴え、娘は真っ青になって、倒れてしまった。

 呆然(ぼうぜん)とする真澄さん。

 看護師は「注射に対する恐怖心と痛みのせいでしょう。少し休みましょうね」といい、その言葉の通り娘は30分ほどで回復し、帰宅することができたが、以来しばしばめまい、気絶、手足の痛みを訴えるようになった。

 同じ頃、子宮頸がん予防ワクチンの副作用とみられる症状で、何人もの女の子が倒れたというニュースが盛んに報道されるようになり、「うちの子も、あの注射の副作用なのね。受けさせなきゃよかった」と真澄さんは後悔した。

 ただ一方で、訴訟などで問題とされた症状とワクチンとの因果関係は、厚労省等の調査で否定されていること。副作用も怖いが、子宮頸がんになるほうがもっと怖く、確率も高いこと等を考えると、接種を受けたのは間違いではなかったとも思うのだった。

「取り返しがつかない」
母は後悔し、自分を責めた

 高校受験を控えた大切な年に、「取り返しのつかないことをしてしまった」と後悔した真澄さんだったが、娘は案外強かった。

 というか、副作用には軽度のものと重篤なものとがあり、重篤な場合はアナフィラキシー(重いアレルギー)、ギラン・バレー症候群(手足の神経障害)、急性散在性脳脊髄炎(頭痛、意識低下、脳神経の疾患)等を来し、日常生活を送るのが困難になったりもするが、娘の場合は軽度だったのかもしれない。

「私は絶対行きたい高校があったので、副作用に負けないよう、一生懸命頑張って勉強して、志望校に受かることができました。何度も倒れて、気が付くと頭にコブができていたり、手足に大きくて青黒い内出血ができていたりして、危ない目にも遭っていたと思いますが、必死でした。

 高校に入ってからの3年間は、毎日片道10キロを自転車で通って、だいぶ丈夫になって、倒れることもほとんどなくなっていたんです」

 後に、大学病院を受診した際、娘はそう医師に話した。