一方、自民党が票田としてきた地方の多くでは、保育所には空きがあり、待機児童はほぼいない。端的にいえば、待機児童対策をしても、地方では支持を得られず、選挙の票にはつながらないのだ。それに対して、幼保無償化を実現すれば、全国の約300万人に恩恵があるとされる。自民党の政調会がいつも通りに政策を立案すれば、幼保無償化が選択されるのは自然なことなのだ(第209回・P4)。

 それに対してこの連載では、都市部の問題である待機児童問題は中央集権の政党ではなく、地方に基盤を持つ政党が主導して解決したほうがいいと主張した(第209回・P5)。その事例は、大阪市による待機児童問題の事実上の解決であった。

 大阪市は吉村洋文市長(現府知事)の時代に、認可保育所の大幅増設による保育所入所枠の9000人増を断行した(吉村大阪市長定例記者会見2018.5.10)。まさに「異次元の保育所整備」であり、待機児童数を過去最低の37人にしたのだ。これは、「幼児教育無償化」を優先させてしまう「中央集権」の自民党政治よりも、地方が自ら財源を確保し、実行するほうが「待機児童問題」の解決に適していることを示しているのではないだろうか。

 今や、全ての都道府県、市町村が中央政府に伺いを立てて行政を行う「中央集権体制」は古いのではないか。橋下徹元大阪府知事・市長も著書等で主張しているが、東京、大阪、京都、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡などの大都市に政府の権限の多くを移管し、その大都市の周りを市町村が囲む「地方主権」で、社会保障や福祉などの行政サービスを提供するのが、適していると考える。

 そして、この連載では、地方主権の実現のための「憲法改正」を主張してきた(第69回)。参議院の「連邦国家型上院」への改革である。ドイツやカナダなど連邦制の国家では、日本の参院選のような「上院選挙」は行われない。上院は、知事・地方議会の代表、マイノリティの代表の議員で構成されている。

 日本に「地方主権」を導入するには、「地方分権」も重要だが、地方の代表が国会議員となり、国の意思決定を担う「連邦制型上院」の導入を検討していいのではないだろうか。

 例えば、17年の衆議院選挙で小池百合子東京都知事率いる「希望の党」が惨敗した(第169回)。その惨敗の原因の1つが、小池氏が東京都知事を辞して選挙に立候補しないことで国民を失望させたことだった。だが、もし日本が「連邦制型上院」で、「東京都知事=上院議員」だったならば、そもそも小池知事が立候補するかどうかという問題は起きなかった。