バドミントンの桃田賢斗選手がマレーシアで交通事故に遭った。高速道路で前を行くタンクローリーに正面から追突、ワゴン車の前方が潰れ、運転手が死亡した。2列目に乗っていた桃田選手とトレーナーの森本哲史氏、3列目に乗っていたコーチと技術スタッフの計4人はいずれも骨折や裂傷、打撲を負うなどして病院に運ばれた。
桃田選手は命に別状はないものの、顔を強く打って眉間や唇、顎などに裂傷を負った。当初は「鼻を骨折」とも報じられたが、その後発表された日本バドミントン協会の確認によれば骨折はなかったものの、病院からは「全身打撲」の診断が下されたという。
東京五輪の出場権は、4月までのワールドツアーのポイントで決まる。すでに十分なポイントを獲得している桃田選手の出場は間違いない。心配なのは、身体への影響だ。頚や肩、腰などにダメージがあれば大きな支障となる。無意識下の影響も含めて、事故前の体調が確保され、不安が一掃されるまでには時間が必要だろう。その間の体力の低下も案じられる。いずれにせよ、ここまで順風満帆に思えた「桃田賢斗の金メダル獲得への道」、その眼前に大きな壁がまた立ちはだかった。
事故当日の夜になって、マレーシアのマハティール首相夫人が桃田選手を見舞った様子が写真とともに紹介された。憔悴した様子の桃田選手の顔には傷が見られ、右腕には包帯かガーゼが当てられている。命が無事だったのは不幸中の幸い、本当に寒気がするような事故だったと想像される。
バドミントン王者が
安価なワゴン車で移動の不可思議さ
詳細はまだ伝わってこないが、この出来事で改めて感じるのは、遠征時の安全管理と危機管理意識の不足だ。
事故車を見て、驚いた人は多かったのではないか。日本では、主に荷物を運ぶようなワゴンタイプの車だ。同じワゴンでも、エグゼクティブに人気のアルファードやエルグランドなどの「走る応接室」ともいわれるような安全対策が十分に施されている車種ではない。
おそらく、選択できる中では最も安価な移動手段の1つではないだろうか。早朝4時だから、選択肢が限られている可能性はあるが、日本を、いや世界を代表するバドミントン選手が選択する方法としてふさわしいだろうか?