今回は、日本選手団から離れ、独自の行動を取っていた中での事故だった。桃田選手は前日、マレーシア・マスターズで優勝。日本選手団はそこからインドネシアに転戦するが、桃田選手は下肢の炎症を訴え、インドネシア・マスターズを欠場し日本に帰国する選択をした。この事故は、帰国のための単独行動中に起こった。安全や快適を求めるならば、他の選手に気兼ねなく、普段より上級の移動手段を選ぶことも可能だった。

 もしかしたら、桃田選手が5年前の出来事(賭博問題)から自らを律し、質素倹約を課していたゆえに選んだリーズナブルな交通手段での事故だったかもしれない。

 チャラチャラする姿は見たくないが、世界王者として、オリンピックの金メダルを目指すものとして、必要な節制と投資を徹底する姿こそが次代の選手たちに伝える王者の行動ではないか。

 桃田選手がマネジメントを任せているのは、サッカーの香川真司選手らが中心になっている会社だ。海外リーグで活躍するサッカー選手が多数所属する事務所が、バドミントンの桃田選手にはあのような安い移動手段を推奨したのか? もしくは黙認したのか。

 エージェントを引き受ける以上、相応の安全対策や予算を確保する、意識づけを徹底するのは当然の務めではないだろうか。昨年プロ転向を発表した陸上短距離のサニブラウン・ハキーム選手も同じ事務所と契約しているだけに、国の宝を守る意識の再設定をお願いしたい。

 この事故を単なるアクシデントで済ませてはいけない。JOC(日本オリンピック委員会)、日本スポーツ協会、そしてスポーツ庁もそれぞれが予算とアイデアを出し合って改善すべきテーマだ。

(作家・スポーツライター 小林信也)