「お試し転職」としての
副業の落とし穴とは

 副業を「お試し転職」のように位置付け、現在勤務している会社に軸足を置いたまま、いわばインターンのように活用する動きも見られます。

 このような目的の副業で注意しておくべきは、「お手伝いレベル」で関わるのと、「がっつり本業」として関わるのでは、自分自身が投入する時間や労力だけでなく、顧客や雇い主のスタンスも変わるということです。副業的に関わっている間の責任は軽いですが、本業として関わると何がしかの成果を約束することになるので、まったく仕事の次元が違ってきます。

 お試し転職としての副業は、職場やそこで働いている人たちを直接見ることができるという点ではメリットがありますが、あくまで判断材料の1つとしてとらえるべきで、それですべてを決めないほうがよいでしょう。

 とはいえ、自分の世界を広げ、キャリアの可能性を広げるという意味において、副業にメリットはあってもデメリットはあまりありません。今後は副業や、副業をきっかけとした転職は広がっていく可能性があります。

 ただし、クリアすべき問題はたくさんあります。副業がクローズアップされているといっても、まだまだ多くの企業は副業を認めていません。やはり自社の業務がおろそかになることや情報漏えいのリスク、利益相反などが懸念されるからです。複数の会社で働き、合計の就業時間が長くなると、健康管理等の問題も発生します。

 そもそも副業のルールは整備されていないことが多いのが実情です。本気でやるなら、いま勤務している会社の上司や人事に相談しながらどこまでやってよいのか、どこからはだめなのか確認し、場合によっては交渉する必要があるでしょう。自分で副業のひな型をつくるくらいの意気込みがいるというわけです。

 また、副業をやろうとしていると知られると、会社によっては「副業の前にもっと本業に集中しろ」と叱責(しっせき)されたり、「彼は転職か独立を考えているんじゃないか」と警戒されたりするリスクもあります。ただ、もうそんなことでひるんでいられる時代でもありません。

 大企業でも45歳になると希望退職の募集が始まるようになっています。そのときになって初めて外部の人材マーケットと接するのでは遅過ぎます。副業を通してもっと早い段階から自分の世界を広げておく、あるいは自分のスキルやキャリアを外部にオープンにしてどんな声がかかるのか試しておいたほうがよいことは明白でしょう。

(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)