テストの点で測れない「非認知能力」=「考える力」「やり抜く力」「折れない心」の土台は、親が子どもの話を聞くことから作られる! 『自己肯定感で子どもが伸びる12歳からの心と脳の育て方』の著者で、30年以上臨床の場で多くの親子を見続けている医師が断言します。本連載では、子どもの脳を傷つけないで「あと伸びする子」に育てるためのノウハウを、著者が接してきた実例とともに紹介していきます。子どもへの接し方に悩むすべての大人、必読!

受験や成績アップにも貢献する「自分は大切にされている」という自信Photo: Adobe Stock

子どもは親が世話をすることで
「この世は信じるに値する」と感じる

自信にはいろんな種類のものがありますが、「自分は大切にされている」という自信は、「自己肯定感」の根底になる感覚といえるでしょう。

「自己肯定感」のもっとも基本的な条件は、「基本的信頼感」だといわれています。基本的信頼感は、赤ちゃんのときに芽生えるとても重要な感覚で、心と脳の発達の基礎となるものです。

赤ちゃんには、食事、排せつ、着替えなど、生きるための世話が必要で、多くの場合は親が行います。親から世話をされることで、「自分は大切な存在」と感じ、「自分への信頼感」を獲得します。「自分への信頼感」を獲得すると、自分を信じることができ、必要以上に自分を責めないで物事をシンプルに捉えることができます。

赤ちゃんはこうした世話を受け、愛情を与えられることを通して「この世界は信じるに値する」と感じ、「他者への信頼感」も獲得します。「他者への信頼感」を獲得するようになると、周囲の人々への警戒心をもたずに、素直に打ち解けて、よい関係が築けます。

その後も身近な家族や友だち、先生などとの信頼関係のなかで、基本的信頼感はゆっくり育まれていくと考えられています。友だちを受け入れて良好な人づきあいができるようになるので、さらに「自己肯定感」は高まっていくでしょう。

ところが、基本的信頼感が作られる時期に自分の存在を否定されると、世の中がよきものとは思えず、自分自身を受け入れられず自分を否定し、自分を愛することができなくなってしまいます。そのため、親から虐待や暴力を受ける、愛されずに育つといった過去があると、「自己肯定感」の土台である基本的信頼感が抜けてしまい、「自己肯定感」は低くなってしまいます。

〈事例〉A君(9歳)の場合
「どうせぼくはダメなんですよね」

A君は9歳の男の子です。夜尿の相談で外来を受診しました。私は、年齢的にも夜尿はあせらずに様子をみることでよいと考えています。しかし、母親は、夜尿の処理が大変で困るということで、夜間はおむつをつけるなどの対応をし、夜尿があると叱責していたようです。

A君は母親の手伝いもできる、学校での成績もよい模範的な小学生ですが、母親には叱られてばかりで、「寂しい」「どうせぼくはダメなんですよね」と「自己肯定感」が低く、いろんなことに対しても「自信がない、できない」と答えていました。

A君は夫婦げんかが絶えない家庭で育ち、小学校に入学すると同時に、両親が離婚しています。離婚後は母親と妹の3人で暮らしていますが、幼い妹がいるため、「お兄ちゃんだからがまんしなさい」と言われ、母親に甘えることもできませんでした。母親は仕事で忙しく、A君は「そのくらいひとりでやれないの!」と叱られることが多かったということです。

受験や成績不振で
子どもに対する要求レベルが
一気に上がると……

「自分は大切な存在なんだ」「自分は愛されている」といった感覚が持てない「自己肯定感」の低い子どもは、自己卑下し、何事にも意欲を持てないことが多くなります。

また人とかかわることも苦手で、すぐにキレたりする場合もあります。

一方、子育てや教育に熱心な親に愛情をかけられて育っても、「自己肯定感」が低い子どももいます。

親に生活の一切を管理される、進路について厳しく注文をつけられる、成績が伸びないと反省させられて、さらに勉強を強いられる――。

教育に関する親のこのような態度は、子どもの「自己肯定感」を低くします。それまでさほど問題がないように思えても、成績が下がった、受験をするなどのきっかけで、子どもに対する要求レベルが一気に上がることもあります。親から過度に期待されたり、親の前でいいところだけを見せて本当の自分は隠しているという状態もまた、「自己肯定感」を低くしてしまいます。(次回に続く)