乳幼児の食事と健康について、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで世界的に知られる研究チームを率いて、100本近い論文を発表してきたクレア・ルウェリンとヘイリー・サイラッドは、赤ちゃんの食事について、次のように語る。
「最初の1000日の経験が人生のほかのどんな時期よりも将来の健康と幸福に大きく影響することが、世界の科学者のあいだで広く認められています」「赤ちゃんがどんな食べ物を口にし、どんな習慣を身につけるかは、生涯にわたる影響をもたらすのです」
受胎してから2歳くらいまでのあいだに、どんなものをどのように食べてきたかが、「健康」「好き嫌い」「肥満」「アレルギー」など、その後の人生に大きく影響するというのだ。
では、何をどう食べたらどんな好影響・悪影響があるのか? 「妊婦は何を食べるといいか」から「母乳の効果、ミルクの効果」「離乳食は何をどうあげるべきか」といったことまで、クレアとヘイリーはそのすべてを『人生で一番大事な最初の1000日の食事』(上田玲子監修、須川綾子訳)にまとめた。本稿では、同書より特別に一部を紹介したい。

「禁止」すると、何が起きるか?

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 親になると誰もが実感しますが、現代の食環境では、子どもが脂肪や糖分の高い食べ物を口にしすぎないように制限することが重要です。さもないと、食欲旺盛で、そうした食べ物を好む傾向がある子どもは、機会さえあればたくさん食べ、太りすぎる危険性があります

 また、食が細い子には何か食べさせなくてはという思いから、不健康だとわかっていても、好きな食べ物を与えたくなってしまうかもしれません。

 ところが、そうすると子どもは、不健康な食べ物でお腹がいっぱいになり、健康的な食べ物への食欲がさらに失われ、当然のことながら興味もますます失われてしまいます。子どもの食欲と体重の増加という点から見て、食べ物を制限するのはよいことなのか、それとも悪いことなのか、あるいは完全に的外れなのかという問題は、長年にわたってさかんに議論されてきました。

 現在行われているある大規模な研究では、制限することは、幼い子どもたちを過剰な体重増加や太りすぎから守れると思われるものの、大きな子どもたち(10歳以上)には効果がないことが明らかになっています。また、その他の多くの研究も、親による制限が子どもの体重増加に影響を及ぼしていることを突きとめるには至らず、効果がないことを示唆しています。

 それどころか、しばらく前に少人数の子どもを対象に行われた想像力豊かな実験的研究は、制限することが悪影響をもたらす可能性さえ示しています。

 幼い子どもたちは、ある大好きなクッキーを食べるのを制限されると(クッキーは透明な瓶に入れて子どもたちの目の前に置かれている)、クッキーへの愛着が増し、やっと食べられるようになったときには、ふだんより食べる量が増えたのです。研究者たちはこれを「あからさまな」な制限方法と呼んでいます。クッキーが見えているため、子どもは自分が食べるのを禁じられていることをはっきりと意識しています。

 この研究は、いずれ許可されるものをあからさまに制限すると、裏目に出ることを物語っています。なぜなら、制限された食べ物への欲求がさらにふくらみ、自由に食べられるようになると、許されたからという理由だけでより多く食べてしまうからです。いわゆる「禁断の果実効果」です。人は手に入らないものを欲しがるのが常で、子どもたちも例外ではありません。