本番前に「緊張しないで」という言葉がNGな理由

 言葉と心、そしてパフォーマンスには深い関わりがあります。思考をつくるモトとなる言葉だからこそ、パフォーマンスを上げたいときにはとくに注意して使う必要があるのです。それが、たとえ脳内で発する、誰にも聞こえないひとり言であってもです。

 たとえば、「ミスをしないようにいこう」「緊張しないで頑張ろう」。こういった言葉は、パフォーマンスを上げるためには、どれも使わないほうがいい「禁句」です。

 この言葉を他人から言われるのはもちろん、脳内で自分に向かって発するだけでも、パフォーマンスの質がガクッと落ち、ときには重大なミスにつながることもあります。一見すると、どれも、やってはいけないことを否定しつつ、注意を促したり、相手に対してエールを送っているので「よい言葉」にも思えるでしょう。なぜ、これらの言葉がパフォーマンスの質を下げるのでしょうか。

 それは、「ミス」「緊張」という言葉が入っているからです。人間の脳は、顕在意識(自分で自覚できている意識)では否定語と肯定語の違いを理解できますが、潜在意識(自分で自覚できない意識)ではその判別がつきません。

「ミスをしないように」と言われると、「ミスをしない」という言葉のなかの「しない」という部分は意識できず、潜在意識のなかでは、ミスをするイメージだけが湧きます。そして、ミスしてはいけないと思えば思うほど、ミスする場面が浮かんできて、体は萎縮してしまい、動きがとれなくなってしまいますし、「緊張しないで」と言われると、潜在意識では否定語が落ちて、「緊張」という言葉だけが浮かびあがり、固くなってしまうものなのです。

「ミスをするな」ではなくて「成功させよう」。「緊張するな」ではなくて「リラックスしよう」が正解です。チームのメンバーなどに対して注意を促すとき、誰かにやってほしいことがあるときは、「○○しないで下さい」でなく「○○して下さい」「○○してくれたら嬉しい」と、やってほしいことを相手が受け取りやすいように肯定的な表現を使って伝えましょう。そうすれば肯定的なイメージが脳を満たして、本番でも質の高いパフォーマンスができますし、また、ふだんの生活でもやめてほしいことをスムーズにやめてもらえるはずです。