社会的不幸とは、選択肢がないこと

高橋:僕は2019年の夏、全国高校生サミットで衝撃的な質問を受けました。これから人生100年時代が来るという話をしたら、「大人はみんなそんな話をするけど、高橋さんは10代の自殺者がどれだけ多いかを知っていますか?」と。高校生に問いかけられて、僕は答えられなかった。「100年生きる社会を作る前に、子どもたちが死にたがる社会を作らないことが先なんじゃないか?」と聞かれて、僕は何も言えなかったんですね。

 考えたら当然のことです。今、政府や民間企業も人生100年時代の到来を前提とする制度設計やビジネスを作ろうとしています。子どもたちは、これから80~90年生きていかなければならない。でも、あまり幸せを感じていない大人の背中を見ていると、そんな生き地獄が続くのはまっぴらごめんだと思うはずです。今のままでは、若い世代が希望を持てない。社会のものさしを変えていかないとその答えは出ない。僕はそこが問題で、待ったなしだと思っています。

新井:厚生労働省が発表したデータによると、日本の10歳から39歳までの死因の第1位は自殺です。今の社会システムはとても息苦しくて、そこに属したくなくても選択肢がない。社会的不幸とは、選択ができないことです。大人が幸せそうじゃない、楽しそうじゃない。正直者がバカを見るような社会になってしまっている。だから自殺は減らないんですよ。子どもたちがワクワクするような社会を作らないといけないのに、なぜそれができないのだろうか?

 僕はずっとそういうことを考えてきました。そして、まずはお金のあり方を変える方が早いと思ったんですね。なぜ、こんなにお金に縛られなければならないのか? お金は人間が作ったものであって、神が作ったものじゃない。自分たちで作り直せる時代になったんですよ。ならば、複数の選択肢を作って、みんなが自由に選べるほうがいい。その選択肢を作ることができれば僕はいいと思っています。生きるというのは選択をし、投票をすることだから。

(イベントレポート③につづく)