1月9日、中国国営メディアの新華社通信は、専門家チームがSARSや中東呼吸器症候群(MARS)とは異なる種類の新型コロナウイルスを検出したと報じた。そして、感染者数は41人で7人が重症、1人が死亡したと明らかにした。

 しかし、この時点で新型肺炎が、SARSを超える感染拡大を起こすとは、中国国民の誰も想像できなかったに違いない。1月10日、例年通り中国で「春運」と呼ばれる、春節(旧正月)前後の大型連休に合わせた特別交通ダイヤが始まった。中国国民は、帰省や旅行で、観光地や交通機関はどこも大混雑となり、「民族大移動」のような状況になった。

 だが、春節で賑わうその裏で、深刻な事態は着々と進行していたことを中国政府は知りながら隠していた。SARSが流行した当時、中央政府の見解に体を張って反論し、感染の拡大を阻止した人物として知られる鐘南山氏が新型肺炎専門家チームのリーダーとなった。1月20日、鐘氏は「新型コロナウイルス肺炎は確実に人から人に感染している」と発言。ここで、中国国民は初めて、新型肺炎の深刻さに気付かされることになった。

新型肺炎による死者はSARS超え
900人超に拡大

 1月20日、武漢市だけでなく、中国の北京市と深セン市、上海市などで初めて発症者が確認されたことが報じられた。春節前の「民族大移動」が既に始まっていたことが、中国全土へのさらなる拡大を引き起こした。

 1月22日、世界保健機構(WHO)が新型肺炎の流行で初の緊急委員会を開催した。だが、委員間で意見が対立し、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」との結論には至らなかった。同日、これまで3人とされた中国国内の死者が17人であると発表された。

 ここで習近平国家主席が、遂に新型肺炎の「撲滅」を指示した。すると、1月23日に武漢市は突如、バスや地下鉄、鉄道、フェリー、航空便の各交通機関を運行停止とした。道路も市境に検問所を設置し、市外に出る車の乗員に体温検査を実施した。人口約1100万人の大都市を事実上封鎖する措置を取ったのだ。

 これは、全国各地から武漢に出稼ぎに来て新型肺炎に感染した人々が、春節で帰郷した地元でウイルスを拡散する事態を防ぐために、武漢市をまるごと封鎖するという荒療治に打って出たということだ。