最近は、自国に有利な候補者を当選させるための「選挙介入型」も頻発している。
選挙運動がツイッターやフェイスブックなどのSNSを利用するようになったので、相手国の選挙の際、フェイクニュースを流したり、自国に不利な候補者が困る機密情報を意図的に公開したりして、外国の選挙に介入することが増えている。
2016年の米国の大統領選挙の際、民主党候補を不利にするためロシアが米国民主党全国委員会に対するサイバー攻撃をしたとされる。
また2017年にはフランスの大統領選挙の際、マクロン候補の陣営に大規模なサイバー攻撃があり、大量のメールや会計文書の情報がネット上に流出したり、今年1月の台湾総統選挙の際、中国の集団が台湾独立を主張する蔡総統について、「博士号を取得していない」などのフェイクニュースを流したりしたことが報道されている。
「犯人」の特定難しく「被害」気付かず
破壊力や脅威は年々拡大
サイバー攻撃は従来の軍事行動やテロなどと違う特殊な性格を持っている。
第1に、サイバーはデジタル化されていて形がない。このため侵入されたり、コピーして情報を持ち出されたりしても気付かないことが多い。
サイバー攻撃は通常の軍事攻撃と異なり、証拠が残らず「犯行声明」を出さないため、「犯人」の特定は難しい。
第2に、インターネットは世界中でクモの巣のように張り巡らされている。このため、攻撃者がどこにいて、どこを経由して侵入してきたのかを割り出すのが難しい。
また侵入したコンピューターシステムを踏み台にして他に侵入することが多いので、自分に被害がないからと安心してはいけない。
第3に、サイバー攻撃の物理的な破壊力の脅威は年々大きくなっている。
全ての社会システムはコンピューターにより制御されている。このため、コンピューターを乗っ取り、原子力発電所を爆発させたり、新幹線を暴走させたりすることができる。
サイバー攻撃を単なる情報システムの問題と捉えていてはいけない。
第4に、サイバー攻撃の技術は年々進歩している。このためサイバー防衛も年々技術を向上させなければならない。いたちごっこは続く。
サイバー攻撃で自国にとって有益な相手国の産業技術や軍事情報を手に入れたり、社会インフラに侵入して相手国の経済や国家の機能をマヒさせ、軍事施設を破壊したりすることができるようになったため、軍隊や国家機関による大掛かりなサイバー攻撃が増えている。
このような性格のため、サイバー防衛は従来の常識を超えた取り組みが必要なのだ。