なぜこれほどの台湾名物になったのか?

 まず台湾の気候が熱帯気候で、パイナップルが作りやすい環境だったことが挙げられます。日本統治時代、台湾は世界3大産地のひとつになり、パイナップルは輸出用缶詰の原材料として重宝されていました。その後、パイナップルは主として国内消費用となり、その大量の原材料を活かしてパイナップルケーキが作られるようになりました。

 また、パイナップルを現地語で書くと「鳳梨」となるのですが、台湾語の発音が「旺来」(オンライ)と同じ。「旺来」には「幸運が来る」という意味があり、幸運を運ぶお菓子として台湾の人々に愛されているのです。

2種類のパイナップルケーキ

2種類のパイナップルケーキ
左が鳳梨酥、右が土鳳梨酥。あんに含まれるパイナップルの比率に違いがある

 ガイドブックにはあまり書かれていないので日本では気にしている人は少ないのですが、実はパイナップルケーキには、「鳳梨酥(フォンリースー)」と「土鳳梨酥(トゥフォンリースー)」の2種類があります。

 台湾産パイナップルは酸味が強いので、酸味をマイルドにしたり、甘みを補充したりするためにあんに冬瓜などを加えるパイナップルケーキがあります。このパイナップルケーキのことを「鳳梨酥」といいます。元々、パイナップルケーキは「鳳梨酥」が主でしたが、台中にある製菓店「日出」が2006年に初めてパイナップル・オンリーのあんを用いた鳳梨酥を作りました。これが「土鳳梨酥」のはじまり。「土」には“その土地の、土着の”という意味合いがあり、台湾産パイナップルを主原料とし、冬瓜などを加えていないパイナップルケーキのことをそれまでのパイナップルケーキとは区別して「土鳳梨酥」と呼ぶようになりました。

 実際、冬瓜などを使うと原材料費が安く抑えられる部分もあり、材料にこだわっているお店や高級なパイナップルケーキと打ち出したいお店は、「土鳳梨酥」としっかり書くことが多くなりました。違いは、パッケージ裏の原材料の部分を見てみるとよくわかります。

 また、パイナップルの品種にも酸味強めの「3號仔」を使用したり、甘さ強めの「金鑽鳳梨(=台農17號)」を使用したり、これらの品種をブレンドしてあんにしたり。材料が少ないにも関わらず、味への工夫はかなり奥深い部分があります。そのため食べ比べが面白いのです。

 ただし味は人それぞれの好みによって違うので、甘みの強い「鳳梨酥」の方が好きという人もいますし、高級店でも味にこだわっているからこそ「鳳梨酥」を作っているところもあります。

 ちなみに中国語で「酥」はクッキーのようなサクサクとしたお菓子に用いられることが多いので、語句的にいえば「パイナップルクッキー」という訳の方が近いかもしれません。けれどもパイナップルケーキはクッキーよりももう少ししっとり感がありますし、既に台湾でも英語表記などで「パイナップルケーキ」として定着しています。