数多くのテレビ出演や講演、ベストセラー作家としての顔を持つ明治大学教授の齋藤孝先生と、
『ぴったんこカン・カン』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』『輝く! 日本レコード大賞』など
数々の人気番組の司会者として知られるTBSアナウンサーの安住紳一郎さん。
TBS『新・情報7days ニュースキャスター』で司会者とコメンテーターとして共演しているふたりは、かつて明治大学で先生と生徒の関係だった。
中学校高校国語科の教員免許を持つ安住アナは当時、明大の教職課程で齋藤孝先生の授業を受けていたのだ。
そんな師弟関係にあり、日本屈指の話し手であるふたりが、『話すチカラ』について縦横無尽に語り尽くす。
“国語科オタク”を自認する安住アナの日本語へのディープなこだわりは必読。
齋藤孝ゼミの現役明大生を前に、安住アナが熱弁をふるった白熱教室の内容も盛り込む。
学生からビジネスパーソン、主婦まで、日ごろの雑談からスピーチ、プレゼンまで楽しくなる『話すチカラ』が身につく!
伝わりやすい
話し方、
声の質を
意識する
声の出し方については、高低の使い分けを少しだけ意識してみましょう。
基本的には、誰もが「高い声」と「低い声」を持っています。
私はテレビや人前で話すときには、あえてちょっと高めの声を使っています。
高めの声のほうが人に話を聞いてもらいやすいからです。
実は、本当の地声はもっと低いのです。
テレビ業界には「日本には声の低い司会者は存在しない」という名言があります。
たしかにテレビ番組の司会で活躍している明石家さんまさん、中居正広さんなどは高い声の持ち主です。
ジャパネットたかたの髙田明前社長は、通販番組での甲高い声でおなじみでした。
あの独特の高い声が、みんなの注目を集めたのです。
齋藤先生も、昔から声が高いという特徴がありました。
齋藤先生の話が多くの人を引きつけるのは、あの声があるからです(笑)。
テレビで声が低くても仕事として成立しているのは、俳優さんや声優さん、ナレーターさんなど、ごく一部の人に限られます。
ところが、男性の新人アナウンサーの中には、自分の低い声に自信を持っている人もいます。
まわりから「低くていい声ですね」などと褒められ、得意になって仕事でも低い声を使うと大変なことになります。
先輩アナウンサーから「君は人気俳優か。低い声でも許されるのは、小栗旬さんくらいだぞ」などと叱られ、急に声が上ずったりすることになります。
声が低くても通じるのは、みんながすでに集中して聞いてくれるという前提がある場合です。
自分がどういう声を使ったら、他人に受け入れられるかを知っておくことが大切です。
ただし、地声を高くしろとは言いません。自分のアイデンティティを崩すのは間違っています。
プライベートと人前での話し方の使い分けを意識するということです。
男性の場合、日本語は中性的な話し方のほうが話しやすく、聞き入れてもらえる傾向にあります。
たとえば、「オネエ系タレント」の人たちは、そろって饒舌です。
この傾向を理解したうえで、あえて中性的な話し方をとり入れている人もいます。
教育評論家の尾木直樹先生が有名です。かつては厳しい論調の正統派の先生だったのですが、今ではやわらかい口調で話す「尾木ママ」のキャラクターが定着しています。
おそらく、教育のシビアな問題も、“ママ口調”のほうが話しやすく、聞き入れてもらいやすいと体験的に気づかれたのではないでしょうか。
男性の保育士、セールスマン、デパートの店員さんなど、人当たりを重視する職種の人たちは、自然と中性的な話し方にシフトしていきがちです。
そのほうが当たりがやわらかくなり、話しやすいからです。
あえて中性的な話し方を引き出しとして持っておくのも、1つの方法です。
(次回へ続く)